先日、東芝の海外調達比率の拡大の方針を受け、日本の調達・購買がなくなる可能性についてお伝えした。 これは、将来起こりうるかもしれないこととして伝えたつもりであったが、新聞記事に取り上げられるようになった時には、もうすっかりその事象はあちこちで起こっていることなのかもしれない。 今回は、中小企業の海外調達拡大の動きを紹介する。
射出成型用ノズル製造のフィーザは、部品の海外調達比率を現在の5%から3年以内に30%にまで引き上げる。従来の海外調達品は温度センサーなどにとどまっていたが、マニホールドなど付加価値の高い品目に広げる。
電熱器メーカの坂口電熱は1~2年で部品の海外調達比率を現状の1割から2割程度と倍に引き上げる。部品によっては国産品の半分以下の価格で仕入れられるという。
作業工具製造のフジ矢は、現在国産品でまかなっている材料の1~2割を年内にベトナム製品に切り替える。加えて、現地調達比率が6割のベトナム工場の現地調達比率をさらに高める。
住設機器製造の太陽パーツは、中国の生産拠点での現地調達比率を現在の6~7割から1~2年内に8割程度まで引き上げる。(出所:2010年8月25日 日本経済新聞 14面)
記事では、これらの企業に加えて、エルム、新城製作所、アサダといった企業の事例も紹介されている。
海外調達では、サプライヤの発掘・選定もさることながら、取引開始後の個々の発注における品質管理、納期管理に、日本企業とつきあうのとはまったく比べものにならない位、気を遣わなければならない。とはいえ、そうした手間、コストを掛けても、大きなメリットが得られるのが海外調達である。
個々の発注における品質管理、納期管理を徹底するには、日本のサプライヤのようにこれらをサプライヤ任せにするのではなく、現地に社員を貼り付けるか、信頼できる人間をその任に置かなければならない。
人を置いたとしても、海外調達の立ち上げ当初には、品質不良やトラブルがつきもので、大企業と異なり、一回の失敗が企業にとっての生き死につながる中小企業はリスクが取りづらく、中小企業にとって、海外調達はハードルが高いもの。
これらを考えると、その負担は中小企業にとっては軽くなく、中小企業ではなかなか単独では海外調達が進まないと考えていたが、各企業工夫して、そうした人材を捻出しているようだ。リスクについても、現在の経済環境、日本市場の先行きを考えると、悠長なことは言っていられない。
私共のようなベンチャー、中小企業にとって、大企業に対抗する唯一の術はスピードだ。大企業が調達、生産の海外移転を逡巡する前に、コスト構造を海外の競争相手のそれと合わせ、これまでの取引を維持、日本に残る市場を取っていく。合わせて、価格競争力をつけ、海外市場を開拓していくには、中小企業の我われの方こそ果敢に海外調達に取り組み、進出先市場のコスト構造に合わせていかなければならない。
次のページ座して死を待つよりは、打って出た方が生き残れる可能性は...
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
週刊 戦略調達
2010.09.29
2010.09.22
2010.09.15
2010.09.08
2010.08.31
2010.08.24
2010.08.17
2010.08.10
2010.08.04
株式会社 戦略調達 代表取締役社長
コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます