リストラ断行時に陥りがちな盲点とそれを回避するポイントを解説。
一昨年の春ごろから、リストラの相談が増えました。未曾有の不況の中で、ダウンサイジングは企業の生き残りをかけてのやむを得ない選択であり、ついては、スムーズに進めるためにはどうしたらいいか、というわけです。そうした相談を受けて、いつも心配になることが3つあります。
1つ目は、リストラが目的化する危険があるということ。危機に瀕して、その脱出策とリストラ計画を描くのですが、リストラ計画が先行して、その先の再生路線までを描き切れないままに、いろいろな対策を進めているということ。
2つ目は、本当に必死なのは社長と一部の幹部だけで、幹部以下社員の危機感・当事者意識が希薄とまでは言いませんが、温度差が相当大きい中で進んでいっている例が多いということです。
3つ目に、そもそも自信を失っている社長が多いということ。
今回は、1つ目の「リストラが目的化する」という問題について取り上げることとします。
企業の再生局面では、この厳しい状況を乗り切った後に何が待っているのかを、意思を強く持って上手に示すことが大事となります。しかしながら、生き残りが大命題となり、とにかく今を乗り切ることに躍起となってしまって、それができないのが実情です。社長も経営陣も余裕を失っている上に、社員に将来展望や夢を提示することが「目の前の乗り切り策に集中できなくする余計な雑音」という思い込みを持ってしまっているためです。
乗り切り策が思うように進めば問題はないのですが、山あり谷ありが現実。経営会議など幹部が集まる会議で、一部の幹部から「社員は疲弊しています」などという社長が一番聞きたくない報告がされることになります。なかなか成果が出にくい時に、目の前の乗り切り仕事だけに集中させられることは、目の前の大きな砂山を意味もなく10メートル隣に移動させろと言われているに等しいことになる危険性があります。
理想的には、幹部は一人ひとりが、社長にとっての経営の同志であってほしいわけですが、ただ単に期待して仕事を任せているだけでは、なかなか自動的に「同志」にはなってくれません。その第一歩は社長の意思を深く知る機会を多く作ることであり(分かっているだろうという期待は見事に裏切られます)、そして二番目に必要なことは「共に夢を描く」ということです。
このように申し上げると、リストラまでしなくてはいけないような状況で「夢を描くなんて寝言を言っている場合じゃない」という声が聞こえてきそうです。しかし、あえて言わせていただければ、「社長がそういう意識だから組織に力が生まれない」のです。
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今野 誠一
株式会社マングローブ 代表取締役社長
組織変革及びその担い手となる管理職の人材開発を強みとする「組織人事コンサルティング会社」を経営。 設立以来15年、組織変革コンサルタント、ファシリテーターとしてこれまでに約600社の組織変革に携わっている。