横浜開港150周年記念イベント開国博Y150や、16年夏季東京五輪招致を巡って、契約後の非合理な減額請求が堂々と為されています。 一体、どうしてしまったのでしょう? こうした非合理な減額請求が、ベストプラクティスとして広まることが無いよう、その問題点を明らかにすると共に、私たちがこうした状況に陥らないようにする方法についてご紹介します。
尚、東京オリンピック・パラリンピック招致委員会がまとめた「2016年オリンピック・パラリンピック競技大会 招致活動報告書」によると、五輪招致活動における東京都の契約形態は、随意契約が金額で94.3%、件数で90.2%、競争入札が金額で5.7%、件数で9.8%となっています。また、実際の金額や相手先が開示されない一方で、わざわざ広告代理店との特定の1社からしか見積を取らない特命随意契約を正当化する記述があることから、随意契約のうちの多くの部分では、相見積も取られていないのではと推察されます。これはあくまでも推察ですが、このようなケースでは、既に、この広告代理店に都の関係者の多くが絡めとられてしまっているのかもしれません。
■ 自ら優良取引先を退けることに
横浜市や東京都は、たとえ、今回の騒動で幾らかの損失を回収できたとしても、中長期的には、もっと大きな利益を失うことになりました。それは、「こことは、まっとうな商売ができない」というイメージを、広く多くのサプライヤに広めてしまったことです。
「あそこは、自分達の失敗のツケをこちらに回してくる。」
「あそこは、ちゃんと契約をしても、後で反故にする。」
こうしたイメージが定着してしまうと、他に商売のある優良サプライヤであればあるほど、こうしたところとの取引に応じなくなります。
結果として、競争は減り、しかも、近寄ってくるのは、他に商売のない、二流のサプライヤばかり。これでは、外部の専門企業を使うことで得られるはずであったメリットを失うばかりです。
□ リスクに応じたプライシング
そもそも、イベントの成功や五輪の招致といった事業リスクは、事業主体が負うべきものです。事業が成功した時だけの数字を基に、事業の実施の可否を判断することに誤りがあります。事業を計画する時に、その事業が失敗したら、どれだけの損失を被るのかも含めて判断するのが、事業主体の仕事です。
もし、事業リスクを分担したいのならば、予め、リベニューシェア型の契約にするなどしておけばすむことです。ただし、取引先にリスクを分担させると、それだけ、取引コストは高くなります。サプライヤにしてみれば、そのリスクに見合った課金をせざるを得ませんので、その保険料が上乗せされ、取引価格は高くなります。
弊社でも、成功報酬型の契約をお客様から求められることがありますが、その際には、プロジェクトで想定されるリスクを考慮して、プライシングします。
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株式会社 戦略調達 代表取締役社長
コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます