これまで原価明細を明らかにし、個々の項目の原価管理を徹底する方法は、コスト低減の手段として、広く用いられてきました。ところが、このような原価管理の徹底が、コスト削減だけではなく、売上にも有効なのです。今回は、原価管理の徹底で売上を伸ばしている前田建設工業の取組みを紹介します。
これからは、様々なサービスについても、付加したら幾ら、削ったら幾らときめ細かくメリハリをつけたオプションとして提示できる事が、営業力の強化につながります。
このように、原価管理の徹底は、コスト削減だけではなく、営業にも有効で、売上を伸ばす上でも非常に有益な手段になりますが、その実現は、なかなか簡単には行きません。前田建設工業でも、「最初の8億円の工事では、見積もり作業に2カ月近くかかった(出所:前出J-Net21)」との事です。
ただ、見積段階から、求められているアウトプットに必要な作業やリスクをすべて洗い出し、それぞれの作業で必要な資材・スタッフの品質を見極められるようになれば、当然、アウトプットの質は高まります。また、それらがお客様が求めているものと本当に合致しているのか予め確認でき、アウトプットの質をさらに改善する事も可能です。また、今回見てきたように、提案の信頼性やきめ細かいオプションの提案など営業力の改善にもつながり、これらは売上拡大に直結します。もちろん、原価管理の徹底は、コスト低減機会の発掘にも非常に有効で、収益率の改善にもつながります。確かに一朝一夕でできる話ではありませんが、一石二鳥どころか、一石四鳥、五鳥とも言える話で、その効果は絶大です。
原価管理の徹底は、「調達・購買部門にサプライヤの原価管理をしっかりしろと言ってあるから大丈夫。」で済む簡単な話ではありません。見積段階から、お客様が求めているアウトプットに必要な作業やリスクをすべて洗い出し、それぞれの作業で必要な原材料・部品・作業・スタッフの仕様・レベルを、社内の活動も含めて見極め、営業での提案につなげていく企業全体としての取組みが不可欠です。
厳しい経済・競争環境の中で、調達・購買業務においては、サプライヤの選別の傾向が強まっており、こうした原価管理の徹底に協力できるか否かは、選別における重要な判断要素となっています。また、今回見てきました通り、コスト削減だけでなく売上も大きく伸ばす手段となりますので、あなたの会社でも、経営課題の一つとして是非取り組んで頂きればと考えます。
※本稿は、弊社が発行しているメルマガ「週刊 戦略調達」の記事を編集・加工したものです。「週刊 戦略調達」は、調達・購買業務とそのマネジメント、コスト削減・経費削減のヒントを提供すべく、調達・購買業務のマネジメント、戦略調達のプロフェッショナルが、最新のトピックスから、調達・購買業務におけるトレンド、業務への影響を解説したものです。最近の記事のバックナンバーの閲覧やご購読は、http://samuraisourcing.com/knowledge/weekly/ にて行えます。
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株式会社 戦略調達 代表取締役社長
コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます