これまで原価明細を明らかにし、個々の項目の原価管理を徹底する方法は、コスト低減の手段として、広く用いられてきました。ところが、このような原価管理の徹底が、コスト削減だけではなく、売上にも有効なのです。今回は、原価管理の徹底で売上を伸ばしている前田建設工業の取組みを紹介します。
発注側にしてみれば、提供されるモノの形が目の前にない故に、請負側が本当にそれが提供できるのか否かの判断がなかなかつきません。そのため、建設、IT開発、コンサルティング、アウトソーシングといった業界では、大手に仕事が流れがちです。「天下のI○M、マ○○○ゼーでも失敗したのだから、誰がやっても失敗した。だから、I○M、マ○○○ゼーを選んだ私のせいではない。いや、むしろ、下手な所に頼んで無駄なお金を使う事なく、そもそも今回のプロジェクトが無理である事を証明した私は、立派に責任を果たした」という論理です。
実際には、こうした買い方は、委託する業務だけではなく、「プロジェクトが失敗しても大丈夫というお墨付き」も買っているので非常に高くつきます。しかも、建設、IT開発、コンサルティング、アウトソーシングといった業務は、装置産業ではなく、担当者の質やそれらのマネジメント能力で成果が決まりますので、会社の規模と業務の成否、効果は必ずしも比例しません。
こうした形のない請負業務のサプライヤが仕事をできるか否かを見極めるコツの一つは、これらのサプライヤが、その業務を詳細にイメージできているか否かを見極める事です。そのためには、今回のケースのように、原価管理の精度を確認するのは非常に良い手段です。
請負業務で原価管理を徹底するには、求められているアウトプットに必要な作業やリスクをすべて洗い出し、それぞれの作業で必要な資材・スタッフの品質を見極められている必要があります。
ですので、建設、IT開発、コンサルティング、アウトソーシングなどの請負業務では、原価開示方式は、その算出根拠となっている作業、用いる資材・スタッフの仕様・レベルも合わせて示す事により、お客様に、貴社がその業務を請け負うだけの高い能力がある事を明らかにする非常に有効な営業手段となります。
また、日本では、これまでサービスは無料と考えられ、様々なサービスをお客様に提供するものの、その提供コストは把握されて来ませんでした。そのため、サービスのコストを、こちらもどんぶり勘定で、製品価格に反映させたり、異なるサービスを平均的に高い価格で提供してきました。
しかし、デフレ下の経済の中で、お客様は、多少サービスを削ってでも、こうした曖昧なコストについて削減していきたいと考えています。ところが、サービスの原価が分かっていなければ、サービスを削っても、どれだけ価格を下げれば良いのか分かりません。
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株式会社 戦略調達 代表取締役社長
コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます