製品やサービスが流通するのは、「需要」と「供給」の原理が働くからといいますが、それだけではありません。 そこにもうひとつの極めて重要な要素である「信頼」というものがないと、流通はしないのです。 今回は、「信頼するということ」について考えてみたいと思います。
◆クリント・イーストウッド監督の話題作
「インビクタス ~負けざる者たち~」を観に行きました。
主演はモーガン・ フリーマンとマット・デイモンです。
◆南アフリカ共和国のネルソン・マンデラ大統領と同国代表ラグビー
チームの白人キャプテンが1995年のワールドカップ制覇へ向け奮闘
する姿を、描いた人間ドラマです。
◆1994年、南アフリカ初の黒人大統領となったマンデラは、アパルト
ヘイト(人種隔離制度)による人種差別など3世紀半続いた白人支配
に終止符を打ち、新生南アをスタートさせます。
◆筆者は、ちょうど1993年から5年間に渡り、商社の駐在員として南
アフリカに駐在し、白人政権から黒人政権に移行していく激動の南ア
での生活を体験しました。
◆また、この映画で描かれている南アとニュージーランド代表の決勝
戦を、幸運にも映画のクライマックスの舞台となった、エリスパーク
競技場で実際に観戦した経験がありましたので、この映画を観た後の
感慨もひとしおでありました。
◆映画のシーンで、黒人抑圧の象徴とされ、黒人から忌み嫌われて
いた南アラグビー代表チームの緑と金色のジャージを、マンデラ
大統領が自ら着て、決勝戦のグラウンドに観客に手を振りながら
笑顔でさっそうとグラウンドに登場するシーンがあります。
◆当時の実際の競技場でも、マンデラがその姿で登場すると、大部分
が白人で占める観客席からも、驚きの歓声が競技場内に地響きのよう
に響き渡り、拍手喝采が鳴りやまなかったことを昨日の出来事のよう
に思い出しました。
◆そのシーンを改めて映画で観て、筆者はあることに気付きました。
< そうか、マンデラは、男同士のあの真の信頼関係をここで
象徴的に示したのだ >
そして、ある人物を思い出していました。
◆この映画にはほとんど登場しませんが、アパルトヘイトを廃止し、
それまで参政権すらなかった黒人を含む全人種参加の議会選挙を
断行し、自分が泥をかぶってでも黒人初の大統領を迎え、南アを
国際社会へ見事復帰させたもう一人の立役者がいるのです。
◆その名をデクラーク。
3世紀半続いた南アの白人政権最後の大統領です。
◆このデクラークとマンデラには厚い真の信頼関係が築かれていた
と言われています。
当時駐在中に筆者がある要人から聞いた象徴的なエピソードを紹介
しましょう。
◆南アのアパルトヘイトに対する国際的な制裁活動や非難が日増しに
高まるなか、約30年近くに渡って投獄生活を余儀なくさせられていた
マンデラに、時の大統領であったデクラークは、牢獄でマンデラと
極秘に面談しました。
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