エヴァンゲリヲンがあるから日本である!

2009.08.05

ライフ・ソーシャル

エヴァンゲリヲンがあるから日本である!

中村 修治
有限会社ペーパーカンパニー 株式会社キナックスホールディングス 代表取締役

2009年6月末に封切られた「エヴァンゲリヲン新劇場版・破」を観た。誠に私的な感想であるが、傑作である。 テレビで見ていた主人公である少年・碇シンジの体温が、今回の劇場作品では、2度ほど上がっている。血が通うことによって、「エヴァンゲリヲン」は、日本の正統派アニメとして再評価される予感がする。

戦後の日本は、アイデンティティーを失った。
経済大国として世界に誇れたとしても、世界平和を、率先して語るポジションにはいない。原爆を唯一おとされた国でありながら、反戦活動のリーダー国になれない。むしろ、アメリカの軍事力の前に、ねじ伏せられている。常に、追従するしかない。

だから、穿った見方かもしれないが、「エヴァンゲリヲン」は、脱・アメリカ=日本のアイデンティティー再生の物語としても見ることができる。

「逃げちゃだめだ。逃げちゃだめだ。」主人公・シンジの永遠なる自問自答は、日本の在り方への、大きな問いかけでもある。


新劇場版エヴァは、何を「破」ったのか・・・。


ウジウジして逃げてばかりで、大きなものに振り回されるばかりの主人公・シンジが、「エヴァンゲリヲン新劇場版・破」では、変わった。

覚醒した。タイトル通り、何かを「破」った。

自ら誰かを助けたいと強く願うようになり、
そのためにエヴァに乗り、戦うことを決意するのだ。
物語を受け入れるのではなく、
主人公らしく、自らが物語を動かそうとする。

反対に、第2パイロットであるアスカは、自己犠牲的に行動するようになり、他人のためにお弁当を作る。
人形みたいだったレイは、碇親子を仲良くするためにパーティーを企画したりする。

テレビのシリーズと前作の劇場版とは、全然、違うストーリーが走り出している。
そこには、逃避ではなく、自発的な戦いが描かれている。
絶望ではなく、希望が描かれている。熱い血が流れ出したのだ。
日本の正統派アニメ「エヴァンゲリヲン」の誕生である。もう、エヴァは、オタクだけのものではない。

誰のために戦い、誰を信じるのか。それが明確になったとき、アイデンティティーは再生される。
その目標のために沸き上がる「人間のカタチをしていないもの=あるまじき力」を知ることこそ、人間の覚醒なのである。それは、日本の再生に直結する。


とてつもない日本のエヴァンゲリヲン。


「とてつもない日本」は、現内閣総理大臣・麻生太郎の著書である。
その中では、世界に認められた日本のソフトパワーを礼賛し、鼓舞している。

日本の技術やポップカルチャーが認められ、世界化していることは素晴らしい。
しかし、その現象を無邪気に誇ったり、自慢したりするのは、大人げないと思う。

日本の正統派アニメ「エヴァンゲリヲン」は、アメリカに受け入れられそうもない。世界化することは難しいだろう。
しかし、答えの出ないものに答えを出そうとする知性と物語力、その大きな神話をカタチにできる圧倒的な画力と技術は、それらこそ「とてつもない日本」である。

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中村 修治

有限会社ペーパーカンパニー 株式会社キナックスホールディングス 代表取締役

昭和30年代後半、近江商人発祥の地で産まれる。立命館大学経済学部を卒業後、大手プロダクションへ入社。1994年に、企画会社ペーパーカンパニーを設立する。 その後、年間150本近い企画書を夜な夜な書く生活を続けるうちに覚醒。たくさんの広告代理店やたくさんの企業の皆様と酔狂な関係を築き、皆様のお陰を持ちまして、現在に至る。そんな「全身企画屋」である。

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