街が、どこへ行っても同じ景色になっちゃうのって?どうなのよ?

2009.07.25

経営・マネジメント

街が、どこへ行っても同じ景色になっちゃうのって?どうなのよ?

中村 修治
有限会社ペーパーカンパニー 株式会社キナックスホールディングス 代表取締役

日本の新しい街は、どこへ行っても同じ景色だ。それって、凄く気持ちが悪い。どうしてそうなるのか?消えた1,454市町村が泣いている。

仰々しい高速道路の高架が見える。田んぼのど真ん中には、大きなショッピングセンター。国道沿いに立ち並ぶ、どこの街に行っても同じブランドの店。田舎育ちの私としては、その風景ができあがる経緯を「街づくり」とは、決して呼びたくない。

平成の市町村合併は、来年の3月で完了するようだ。
自治体の財政力を強化することを目的に、1999年(平成11年)4月に3,229あった市町村の数は、2009年(平成21年)6月には1,775にまで減少した。

約10年で、

1,454の市町村が日本から消えた。

消えた街々や村々のプライドやステイタスは、経済合理の理屈に飲まれてしまった。

「消費」と「金儲け」が、「自己実現」や「自己表現」になってしまう。その2つの能力こそ、ヒトを評価する大きな指標になってしまったことによる弊害が、いろんなところに、生まれてる。

「何を消費するか?」が自分らしさだと錯覚すれはするほど、日本の街づくりは、マーケティング通りに計画され、画一的になっていく。

そんな街づくりで良いのか?
決してよろしくない。
消費大国としての日本は、終焉を迎えている。
「街づくり」や「教育」にも、大きなシフトチェンジする時期がやって来ている。

事務所を同じくするライターが人間国宝の陶芸家を取材したときの話を聞かせてくれた。その氏曰く「伊勢神宮の式年遷宮が20年ごとにあるのは理にかなっている」と。

焼き物に限らず、建築・織物・塗り物など手業による工芸の技術は意外とデリケートなもので、油断すると途絶えたり、技術のコアな部分が抜け落ちたりする。だから、20年ごとの遷宮は伝承する時間として、とくに平均寿命の短い昔は適切であり、お伊勢さんに限らず、神社の祭祀というのは技術を保全する機能も持っていたのではないかという。 
※資料 「神社とお寺」.comより

本当に良い街は、ビジネス的な目的でつくられることを拒むようにして、構造化され、成長していくのだ。

街のステイタスとは、
そこで何が生み出されているか、
そこで何が語り継がれているかで決まる。

街は、何かを生みだしているひとりひとりのプライドが集結することによって維持され、発展するべきなのだ。


「消費」させることを目的とした「街づくり」から、
「生産」と「伝承」に軸足を置いた、
急がず騒がずの「待ちづくり」へ。

街のアイデンティティーは、1日して成らず。
「待てない」というデリカシーのなさが、
この日本の街をのっぺらぼうにしている。

※上記は、「ステイタスデザイン」巻末コラムに加筆したものです。

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中村 修治

有限会社ペーパーカンパニー 株式会社キナックスホールディングス 代表取締役

昭和30年代後半、近江商人発祥の地で産まれる。立命館大学経済学部を卒業後、大手プロダクションへ入社。1994年に、企画会社ペーパーカンパニーを設立する。 その後、年間150本近い企画書を夜な夜な書く生活を続けるうちに覚醒。たくさんの広告代理店やたくさんの企業の皆様と酔狂な関係を築き、皆様のお陰を持ちまして、現在に至る。そんな「全身企画屋」である。

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