経済学者J.K.ガルブレイス著『不確実性の時代』がベストセラーになったのは、1970年代後半である。 あれから、かれこれ30年・・・。 私たちは、いったい何を学習したのか?
1987年8月から18年以上にわたって連邦準備制度理事会(FRB)の議長として、アメリカ経済の舵をとりつづけてきたグリースパン氏は、ガルブレイスの予見に対して、金融市場の予測能力を高め、過去のような金融恐慌が起こらないシステムを創ろうとした。
しかし、昨年の後半、その甲斐もなく、世界で金融市場は揺れた。「確実」を目指した所に、「不確実」が起こったものだから、全世界がパニックになった。「確実性」を追い求め、安定することが、逆に「不確実性」へのリスクを増大させているのが、現代だ。
何でも予測できると賢い人たちは言う。
だが、確実性が増えれば増えるほど、不確実性のコストが増えリスクも増大する。「確実」の想定が決まりごとになるほど、社会はその半面のコストとリスクを背負い、弱体化していく。
そうなら、最初から、「確実」なんて「無い」という、
『無確実』への理解を強くした方が、強い社会になる近道は、見えてくる。
必要なのは、「確実」を前提とした「不確実」ではなく、どげんもこげんも『無確実』であるという発想だ。
私たちは、暮らしの中で、既に気づいている。
どんなに努力をして、確実を目指しても、自分の意図に反して、コミュニケーションが失敗してしまうことを・・・。
「確実なコミュニケーションなど存在しない」のだ。
それは、「確実なビジネスなど存在しない」と言うのとイコールだ。
社会には、決定的な解がない。
解答と呼ばれるものの不確かさを知り、それに付き合い続けた結果として、ステイタスは、手に入る。
ビジネスというコミュニケーションの場で掴み取るステイタスとは、『無確実』の上に輝く。
ちなみに、いま起こっている経済危機を「100年に1度」と評したのは、前述の元FRBの議長グリースパン氏である。その原文は、 “a once or twice a century event”。正式に訳すと「100年に1度か2度」である。とっても不確実な物言いではないか?
明日、生きているかどうかもわからない『無確実』な一生である。
この経済危機自体が、100年に1度か?50年に1度か?その不確かさに付き合い続ける覚悟さえあれば、自ずと明るい道は開けてくる。
※上記は、「ステイタスデザイン」巻末コラムに加筆したものです。
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有限会社ペーパーカンパニー 株式会社キナックスホールディングス 代表取締役
昭和30年代後半、近江商人発祥の地で産まれる。立命館大学経済学部を卒業後、大手プロダクションへ入社。1994年に、企画会社ペーパーカンパニーを設立する。その後、年間150本近い企画書を夜な夜な書く生活を続けるうちに覚醒。たくさんの広告代理店やたくさんの企業の皆様と酔狂な関係を築き、皆様のお陰を持ちまして、現在に至る。そんな「全身企画屋」である。