昨年末のことである。世界同時不況のニュースが世界を駆けめぐる中、史上空前規模ではないかと言われる詐欺事件がアメリカのウォール街で発覚。日本のメディアでは、不思議なほどにニュースにならなかったので、改めてご紹介することにする。
この詐欺事件から学ぶべき教訓は、「肩書きを信用することが、一番大きなリスク」であるということである。では、マドフのじいさんのところに預けるほどのお金を持たない「投資の素人中の素人」である私たちは、何を信用すればいいのだろうか・・・。
ベストセラーになった「金持ち父さん貧乏父さん」には、『経済的な自立や自由を求める人にとって、不動産は投資のための強力な道具である』とある。これって、フワフワした肩書きより、地に足のついた目に見えるモノを信用しなさいということ。そこにある暮らしの実体を信じなさいということだ。
金満社会が膨張し続けている間は、肩書きは武器になる。詐欺まがいの金融取引も、潜行することができる。しかし、バブルが崩壊して信用収縮し始めると、潮が引くようにして汚いものが地上に現れてくる。そう考えると、現在は、本当に信用するべき「ヒト、モノ、仕組み」の見極めができる良い時代なのだ。
この事件は、既に判決がおりている。先月末のことである。米地裁は、巨額詐欺事件のバーナード・マドフ被告に対し、禁固刑150年の判決を下したというニュースが流れた。米知能犯罪史上3番目に長い刑期(最長は禁固845年)。日本では考えられてない判決までのスピードと量刑である。
禁固150年の意味は、刑務所で150年間、所定の作業を免除されて、ひたすら過ごす刑。恩赦を受けても出られない。「太くて短い人生」を望んでいるだろう金融マンや投資家達は、死んでも許されない150年という月日をどう捉えているのだろう?
日本の年金制度の基礎ができたのは昭和36年。国民年金への全員加入が始まったのは、昭和61年。まだ、50年にも満たない制度である。その中身は、国という肩書きを利用しているだけで、上記の事件と大差ない。だから、このままいけば、破綻しても不思議ではない。
その時に、誰が、責任をとるのか。きっと、誰もいない。「生きている間は、うまく生きながらえたい」そんな利権に群がる人達が、スピード判決を出すことはできない。
選挙である。
「太くて短い人生」を望むエリートのためではない・・・
「生きている間は、うまく生きながらえたい」権力者のためではない・・・
あるべきスピード判決を下せるのは、我々、有権者である。
※本コラムは、フリーペーパー「デナーロ」2号の巻末コラムを転載・加筆したものです。大人がちゃんと「お金について語れる」ことを目的とした、日本初のフリーペーパー。ぜひ、ご一読ください。
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有限会社ペーパーカンパニー 株式会社キナックスホールディングス 代表取締役
昭和30年代後半、近江商人発祥の地で産まれる。立命館大学経済学部を卒業後、大手プロダクションへ入社。1994年に、企画会社ペーパーカンパニーを設立する。その後、年間150本近い企画書を夜な夜な書く生活を続けるうちに覚醒。たくさんの広告代理店やたくさんの企業の皆様と酔狂な関係を築き、皆様のお陰を持ちまして、現在に至る。そんな「全身企画屋」である。