「受身の美学」がプレゼンで活きる 

2009.06.17

仕事術

「受身の美学」がプレゼンで活きる 

増沢 隆太
株式会社RMロンドンパートナーズ  東北大学特任教授/人事コンサルタント

プロレスラー三沢光晴の死は、プロレスファンだけでなく、社会全般にも衝撃的なニュースでした。 生前「受身の天才」と呼ばれた三沢ですが、プロレスの受け身は大切な説得力につながります。

私は40年プロレスファンをやっていますが、いまだに「プロレスってショーでしょ?八百長でしょ?」と言われます。
そんなバカな話ある訳ないじゃないですか。全部本気ですよ。流血はちゃんと額から出てるんですよ、ちゃんとカミソリでカットして。

そういった話において、私は「時代劇は全部八百長です。今は平成21年ですから」とイヤミな答えをするお子ちゃまです。40代、大学院教員ですが、何か?
よーするにショーを純粋に楽しみたくて見てるのに、シナリオがあるかどうか等、関係ないんですよ。

ただし!一つだけ真実があります。本物のプロレスラーの体を見ればわかる、ということです。昔私はアニマル浜口さんが”ああ”なられる前、現役プロレスラーだった時、ファンクラブイベントで何度かお会いさせていただき、しかもお酒までおごっていただきました。
国際プロレスのIWA世界タッグ王者時代の浜口さんは、身長は実はたいしたことなく、私より低いかも、位だったのですが、体の厚みが人間離れしてたのです。
「酔っ払ってプロレスラーにケンカ売った」なんていう都市伝説がありますが、本物のプロレスラーの体を見たら、普通はそんな気は起きない、それほど「体が証拠」な人たちだと思いました。

プロレスは「受け身のスポーツ」、「受身の美学」なのです。普通ならロープに飛ばされずに、そのまま反撃すれば良いだけなのですが、プロレスはちゃんと「相手の技を受け」そのままロープに「飛ばされ」そしてまっすぐ帰ってきたところを三沢ならエルボー、ハンセンならラリアート、 ミング(元プリンス・トンガ、ハク)ならトンガン・デス・グリップなんです。

つまり「得意技」とはプロレスラーにとって「見せ場」な訳です。対戦相手はその相手のため、その見せ場を演出するため、最高の舞台設定をするのです。見ればわかる血のりをベタっとつけるとか、オモチャの電気発火式ピストルをバンバン撃ちまくる、なんて日本のドラマの方がよっぽどショーとしての出来は低いと感じます。

ドラマや映画では、悪役が憎ければ憎いほどヒーローが際立ちます。悪代官が狼藉の限りを尽くすところで水戸黄門の印籠が出る、これがいまだに変わらないドラマツルギーの王道なのだと、シナリオ学校で習いましたが、事実でしょう。アヴァンギャルドな演出もこれまで幾度も試みられました。ただ結局やはり行きつくところは「水戸黄門」ということは、ドラマ作りにおいては永遠に変わらないのではないでしょうか。
なぜならこれが人間心理の快感知覚に合うからです。

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増沢 隆太

株式会社RMロンドンパートナーズ  東北大学特任教授/人事コンサルタント

芸能人から政治家まで、話題の謝罪会見のたびにテレビや新聞で、謝罪の専門家と呼ばれコメントしていますが、実はコミュニケーション専門家であり、人と組織の課題に取組むコンサルタントで大学教授です。 謝罪に限らず、企業や団体組織のあらゆる危機管理や危機対応コミュニケーションについて語っていきます。特に最近はハラスメント研修や講演で、民間企業だけでなく巨大官公庁などまで、幅広く呼ばれています。 大学や企業でコミュニケーション、キャリアに関する講演や個人カウンセリングも行っています。

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