大きな力には逆らい難いが、大きな流れを生み出していくことが経営において大切である。
経営は、天候や地震など自然環境の変化、顧客の嗜好・市場・業界の変化、技術の発展などには逆らい難い。経営はそれらに対して基本的に無力である。それらに対応するための柔軟性を持たなければならない。
顧客ニーズを取り込み、顧客ニーズに適合した製品やサービスを提供しなければならない。また、潜在的なニーズを把握して、それに適合した製品やサービスを提供することで顧客ニーズを先取りしなければならない。もっとも、顧客ニーズを先取りしようと意気込んで開発した製品やサービスが売れないことも多いので注意が必要である。
自社の開発した製品やサービスを顧客に押し付ける製品主導の経営ではいけない。顧客主導でなければならないし、顧客主導と思えられることや、感じられること、あるいは、それらを演出することが大切である。それは市場創造の経営だと言える。
市場創造の経営とは顧客の言いなりの経営ではない。顧客は自らのニーズを具体的に満たす方法を知らないことがある。ニーズやその満たし方についてうまく説明出来ないこともある。
市場創造の経営は、顧客ニーズに合わせて自社の能力を具体化する活動だと言える。そこには明確な方向性がなければならない。潜在的な顧客ニーズが顕在化するプロセスに適合しなければならない。押し付けでも受売りでもなく顧客の期待に応え、顧客の欲求を満たさなければならない。顧客の期待を超え、顧客を喜ばせなければならない。
市場創造の経営は、技術や能力の問題だけではなく、心理や態度の問題でもある。それは高度な能力の発揮や技術の実現と言うよりは、顧客ニーズや市場の流れに合った哲学の形成や表現である。
どのような製品やサービスを提供するかという問題であるとともに、その伝え方や説明する姿勢や態度など、コミュニケーションの問題でもある。
【V.スピリット No.105より】