企業における所有と経営の分離について引き続き考えてみたい。
経営者や経営陣が発起人となり資金を出し合ったり、時には外部から資金を集めて会社を設立して、事業を始める。この場合「経営」の要素が強くなる。株主(投資家)兼経営者にとっては、会社を所有しているかどうかよりも、会社を経営することが重要になる。具体的な事業目的を達成するために、会社を所有していることになる。
一方で投資家が発起人となって資金を出して、時には、その他の投資家から資金を集めて会社を設立して、事業を始めることもある。この場合、投資家が経営に参加することもあるが、多くの場合、経営者や経営陣は後から選任されることになる。投資家となる親会社から経営者や経営陣が派遣されることも多い。この場合、会社の経営は重要であるが、特定の事業目的のために活動する会社を所有していることに意義があることになる。このような形で設立された会社の経営者や経営陣は、投資家の強い影響を受ける。もっとも、このような会社の経営者や経営陣にとって、投資家は、投資家として意識されるよりも、企業グループという観点で、上司や監督者として意識されていることが多いであろう。
オーナー経営(創業者による経営など)においては投資家が意識されることは少ない。一方で、投資目的によって設立されるグループ会社(子会社や関連会社)において経営が意識されることは少ない。オーナー兼経営者の企業において「所有」していることが前面に出ないのと同様に、投資目的など戦略的に設立された会社において「経営」が前面にでることは少ない。前者を「独立事業目的会社」、後者を「投資目的会社」と呼ぶとすれば、独立事業目的会社においては「所有」は「経営」のための前提や必然となる。投資目的会社においては「経営」は「所有」の前提や必然となる。子会社などの経営は、親会社の経営の延長線上で行われる。
独立事業目的会社においては、指導的な立場にある経営者や経営陣のエゴとして「所有」が前面に出ると危険である。事業の再構築など社運を賭けた経営決断はありえるが、全社的な反対を押し切って所有者が独断で行動する場合、多くの場合機能不全に陥ることになるだろう。
一方、投資目的会社においては、指導的な立場にある投資家のエゴとして「経営」が前面に出ることは問題になりやすい。親会社の業績が好調で、その傘下にある子会社もその恩恵を受けるのであれば、子会社の経営が、親会社の経営によって支配されていても問題になることは少ないであろう。しかし、親会社の経営が行詰まった場合などに、親会社が子会社の経営を管理しようとしても上手くいかないことが多くなる。
独立事業目的会社において「所有」、投資目的会社において「経営」が課題になるのは事業発展の「「第2ステージ」においてである。第1ステージにおいて、独立事業目的会社は、その目的とする事業の経営に注力すれば運営上問題がないし、投資目的会社においては投資家(親会社)の経営の延長線上で組織を運営できる場合が多いだろう。 (次回に続く)
【V.スピリット No.86より】
V.スピリット総集編5
2008.08.01
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