財務諸表が表さない人に関わる価値について考えてみたい。
バランスシート(貸借対照)とは企業が持つ資産の状況を表す主要な財務情報である。それは、資金の調達と運用の状況を示す表である。左側が資金調達、右側が資金運用の状況を表す。そのため左右の資産総額は均衡(バランス)する。
企業は株式発行による増資、あるいは、銀行からの借入や社債の発行によって資金を調達して、何らかの形でその資金を運用する。何も投資対象がない場合は現金として保有される。
バランスシートが第1に表すのは、その企業がどんな資産を持っているかである。現金や預金など流動性の高い資産をどれだけ持っているのか、在庫や未回収の売上(売掛金)をどれだけ持っているのか、ということや、工場などの建物、機械などの設備、ITシステムやソフトウェアなどの固定資産をどれだけもっているのか、そして、それらの資産構成がどうなっているのかということである。【BS左側】
次にバランスシートが表すのは、資産がどのような性質の資金で支えられているのかということである。株主からの安定的な資金で支えられているのか、返済期限のある社債の発行によって調達された資金で維持されているのか、銀行などからの借入によってまかなわれているのか、そして、それら資本や負債の構成はどうなっているのか、などを表す。【BS右側】
これら資金調達と運用の形態が表すのは、企業活動に必要な「人」、「モノ」、「金」、「情報」のうちの「モノ」と「金」である。バランスシートには企業活動に必要な「人」と、多くの場合人が持つ「情報」、あるいは、信用、信頼、歴史、実績、ノウハウ、取引関係など、ソフトな資産価値は反映されない。
バランスシートを見ただけでは、その会社に何人社員がいるのか、それらの社員はどのような専門知識や能力、あるいは経験を持っているのか、経営者は優秀なのか、どんな取引先を持っているのか、組織は効果的に運営されているのか、分からない。
利益(剰余金)が多いことが、人や情報などソフトな資産の状態が良好であることを示唆し、利益が少ないことがソフトな資産の状態が思わしくないことを示唆することにもなるが、一概には言えない。
一方で、このようなソフトな資産の価値がバランスシートに反映されることもある。それは、企業が別の企業を買収した時などである。ソフトな資産の価値、つまり、実際の企業の価値と純粋なバランスシートの価値の差額は「のれん(営業権)」として買収企業の新たなバランスシートに反映される。 (次回に続く)
【V.スピリット No.80より】
V.スピリット総集編4
2008.07.19
2008.07.22
2008.07.21
2008.07.18
2008.07.18
2008.07.18
2008.07.16
2008.07.15
2008.07.14