「お茶屋」は、 基本的になじみ客の紹介がないと利用することができません。 いわゆる「一見さんお断り」です。 ですから、紙に書かれた会員規約や会費はありませんが、 お茶屋のビジネスは実質的には、 「会員制のビジネス」 だと言えます。
ただ、面白いのは、
「金さえ持っていれば会員になれるわけではない」
ことです。
花街だけの暗黙のルールを理解しており、
良識ある社会人としてのマナーをわきまえた人間でなければ、
たとえ金持ちでも、お茶屋のお母さんからやんわりと
拒否されてしまうのです。
逆に、ごく普通のサラリーマンであったとしても、
お茶屋のなじみ客になることが可能です。
(遊ぶお金はちゃんと払えなければだめですけど・・・)
この点、高額の会費を設定したり、
一定以上の保有資産や、高い役職にあることを
入会の条件とすることで、
「富裕層」
としてのステータスを誇示させることが狙いの、
他の多くの会員制ビジネスとお茶屋は異なっています。
ですから、なじみのお茶屋を持っていることは、
「あの人は信用できる人である」
「ちゃんとした常識・マナーを知っている見識の高い人である」
といったことを示す証となります。
単なる「富裕層」以上のステータスと言えますよね。
さて、西尾氏は「一見さんお断り」の背景として
次の3つのポイントを挙げています。
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1 長期掛け払いの取引慣行
→債務不履行の防止
2 もてなしというサービス
→顧客の情報にもとづくサービスの提供
3 職住一体の女所帯
→生活者と顧客の安全性への配慮
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1 長期掛け払いの取引慣行
お客さんは、お座敷遊びの際、
現金やクレジットカード等は一切いりません。
後日、お客さん宛に請求書が送られてくる
段取りになっています。
なじみ客ともなると、
京都駅に着いてからのお出迎えのハイヤーや
宿泊するホテル代などを含む京都滞在中の
すべての費用をお茶屋が立て替えることがあります。
この場合、お茶屋が立て替える費用は、
かなりの金額になりますよね。
万が一、お客さんがちゃんとお金を払ってくれなかったら、
お茶屋はとんでもない損失を被ることになります。
したがって、信用できるなじみ客の紹介がないと、
とても新規のお客さんを受け入れることはできない
というわけです。
2 もてなしというサービス
お茶屋で提供されるサービスに「定型」はありません。
お茶屋のサービスは、
顧客1人ひとりの好みに応じて提供される
「カスタマイズサービス」
です。
お茶屋のお母さんは、
基本的にお客さんにどうして欲しいかを
いちいち聞きません。
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有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー
これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。