京都花街の経営学(0)イントロダクション

2008.06.30

ライフ・ソーシャル

京都花街の経営学(0)イントロダクション

松尾 順
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

京都花街、そして芸妓さん、舞妓さんたちの世界は、 室町末期から現在に至るまで350年にわたって続いてきた 日本の伝統文化のひとつと言えますよね。 でも、花街について、 ほとんどの方は表面的なことしか 知らないと思います。

また、しばしば間違った理解や
偏見を持っていることもあるでしょう。

しかし、その独特の風習やしきたり(ルール)は、
長い歴史の中で培われたものであり、
一定の必然性があるのです。

経営学の視点でこの世界を徹底的に分析し、
わかりやすく説明してくれている本があります。
次の本です。

『京都花街の経営学』
(西尾久美子著、東洋経済新報社)

同書は、京都花街の仕組みや、
芸妓・舞妓さんたちのキャリアを実地体験も踏まえて
深く掘り下げて研究した博士論文を元に書かれたもの。

記述は平易ですからとても読みやすいですよ。

今週はこの本をじっくりご紹介していきます。
今日はイントロダクションです。

京都花街が提供しているのは、端的に言えば

「富裕層向けの高度なおもてなしのサービス」

と言えます。

このサービスのメインキャストはもちろん、

「もてなしのプロフェッショナル」

と呼べる

芸妓(げいこ)さん、舞妓(まいこ)さん

たちですね。

彼女たちは、単に舞いや小唄などの伝統芸能が
できるだけではダメなのです。

「お座敷全体の場の雰囲気を
 顧客にとって心地よいものにする」

空間プロデューサー的な役割も求められるのです。

また、お座敷を提供するのが、
いわゆる「お茶屋」ですね。

お茶屋もまた、高い顧客満足を目指し、
顧客に対する深い理解に基づいた、

「最適なサービスの組み合わせ」

を実現できるようベストを尽くしています。

企業が顧客に提供する「サービス」の質の重要性が
ますます注目されている昨今、京都花街のメカニズムや
芸妓・舞妓さんの提供するサービスの極意を学ぶことは
大きな意義があるのではないでしょうか。

さて、芸妓・舞妓を目指す女性の多くは、
中学卒業後15歳位で花街に入ります。

そして、約1年間の集中的な育成期間を経て

「舞妓さん」

としてデビューします。

舞妓さんとして働く間は、

「年季奉公」

の時期です。給料は支払われません。

舞妓さんを住み込みで受け入れ、育成し面倒を見る
「置屋」のお母さん(経営者)からお小遣いをもらいます。
(「置屋」は、芸人やタレントが所属する、現代のタレント
 事務所のような存在と考えてもらえばいいでしょう)

でも、年季奉公、つまり
デビューから22歳位までの通算6年ほどの期間を過ぎると、

「芸妓」

として独立することも可能になります。

独立した方は、「自前さん芸妓さん」といいます。

自前さん芸妓さんは、
「芸妓組合」といった組合員組織もある独立自営業者です。

自営業者ですから定年はありません。
90歳を過ぎた現役の方もいらっしゃるそうですよ。

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松尾 順

有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。

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