「阿弥陀力」って、どうでしょう。

2008.07.09

ライフ・ソーシャル

「阿弥陀力」って、どうでしょう。

中村 修治
有限会社ペーパーカンパニー 株式会社キナックスホールディングス 代表取締役

メディアと一緒になって、偽装企業を糾弾する。 悪いことは悪いことだが、 なぜ、そんなに堂々と正義がかざせるのか。 ひとつの「ものさし」しか指し示さない日本に、 必要な力とは何だろうか、考えてみました。

阿弥陀の「弥陀(ミダ)は、測るという意味」。
阿弥陀の「阿(ア)は、反意を表す接頭語」。
なので、阿弥陀は、「測れない」「わからない」を意味している。
と、いうことは、浄土宗・浄土真宗のご本尊である阿弥陀如来様は、
「わからない奴」なのである。

キリスト教など、一神教の宗教において、「神」は、絶対的な存在であり、全てを知り、全ての能力を有するとされていることを考えると、まったくの真逆。「わからない」ことに、お手々のシワとシワを合わせる仏教って、やっぱり素敵である。いくつものモノサシで測っても、世の中や、人間って、わかることはない。わからないことが、真理なのである。

経済合理をモノサシにした、勝ち組、負け組。
一方的な正義をモノサシにした、善と悪。何でもかんでも、ひとつのメジャーで測ろうとするから、世の中は歪む。
マスメディアは、わかりやすくするほど視聴率がとれる。国民単純化の装置である。
正義や善意を爆走させて、みんなを全知全能な気分にさせる。

わかりやすい方にばかり進む日本に、
今こそ必要なのは「阿弥陀力」である。
測り知れない大人力である。

全知全能だと自称する社長が居座っている会社の器は、たかが知れている。ひとことで言うとどうなのよーと迫る上司の懐は狭い。わかりやすい企画書で行きましょうというプレゼンに限って、提示できる戦略の奥行きがない。
わかりやすいステータスに、魅力はない。

若者達が憧れるべきステータスとは、その資産の量や、肩書きではない。
ひとつのモノサシで確定するべきものではない。
運命に逆らい、状況に挑み、闘い続けた人だけに帯びている測り知れない高貴さこそ、ステータスである。
多様な他者の力を信じ、許容することのできる測り知れない器量こそ、ステータスである。

アタマの良い人達が望むように、人間や社会が、単純にわかりやすいものだったら、この世の中は、こんなにも発展はしなかった。
「わからないこと」を抱えるから、人も、時代も、前へ進む。「阿弥陀力」こそ、社会の推進力な訳である。全部、わかったら、全部、止まる。

植木等さん亡き現在。
私は、「わかっちっいるけど、やめられないのよねー、南ー無ー」と言えるスーダラな大人でいたいと思う。

「ステイタスデザイン」巻末コラムより

Ads by Google

この記事が気に入ったらいいね!しよう
INSIGHT NOW!の最新記事をお届けします

中村 修治

有限会社ペーパーカンパニー 株式会社キナックスホールディングス 代表取締役

昭和30年代後半、近江商人発祥の地で産まれる。立命館大学経済学部を卒業後、大手プロダクションへ入社。1994年に、企画会社ペーパーカンパニーを設立する。 その後、年間150本近い企画書を夜な夜な書く生活を続けるうちに覚醒。たくさんの広告代理店やたくさんの企業の皆様と酔狂な関係を築き、皆様のお陰を持ちまして、現在に至る。そんな「全身企画屋」である。

フォロー フォローして中村 修治の新着記事を受け取る

一歩先を行く最新ビジネス記事を受け取る

ログイン

この機能をご利用いただくにはログインが必要です。

ご登録いただいたメールアドレス、パスワードを入力してログインしてください。

パスワードをお忘れの方

フェイスブックのアカウントでもログインできます。

INSIGHT NOW!のご利用規約プライバシーポリシーーが適用されます。
INSIGHT NOW!が無断でタイムラインに投稿することはありません。