継続: 続けるために変化する

2008.05.28

ライフ・ソーシャル

継続: 続けるために変化する

猪熊 篤史

続けることは良いことなのか、続けるためにどうしたら良いかを考えてみたい。

『継続は力なり』と言うが、それは正しいのだろうか?企業のリストラや業界再編が進む中では必ずしも継続することを評価しにくいことがある。

人の活動にはいくつかの次元がある。より基本的なものから順番にあげれば、『生きる』、『生活する』、『働く』、『考える』、『行動する』である。『生きる』のは最も基本的な活動であって、人の選択に関わらず生物の細胞にプログラムされているものでるある。生活の次元以降は自分の判断で形を決めることができる。生活するためには働かなければならない。企業に所属して働く、会社を作って率先して働く、最低限の生活を維持できるだけの収入を得る仕事をするなど形は様々である。『考える』ことにも様々な形がある。生きることについて、生活について、仕事についてなど、知能の発達した人間は自分の存在に関わる深いものにまで思いをめぐらせることができる。一般的に思考の対象になるのは生活と仕事に関わるものだろう。生活するため(家族を養うため)にどのように働くのか、どんな生活が最も自分らしいのか、どのような仕事と生活のバランスが最適化なのかなどの思考があるだろう。そして最後に、どのように行動するか、具体的にどのように振舞うのかが問われる。

『続ける』のは、より基本的な活動である。つまり、『生きる』ことであり、『生活する』ことである。そのためにどのように働くのか、どう考えるのか、どのように行動するのかは必ずしも重要ではない。生活のスタイルも一生の内に何度かは変わることだろう。

一方で、行動が持続するような考え方、働き方、生活の仕方など、基本的な価値観が問われる。

柔軟性は大切だが、自分の選んだ生活、仕事、思想、行動を続けること、あるいは、与えられたものを続けよとすることによって、新たな行動、思想、仕事、生活が生まれる。

より基本的な営みを続けるために、より表面的な行動を変化させ、絶対ではないにしても持続的、安定的なものを生み出していかなければならない。そこにイノベーションが生まれる。

伝統の味や伝統工芸と言われるものでも完全に昔と同じものはないだろう。技術、資源、文化、嗜好、社会が変化する中で伝統を守る活動も、それが持続的、安定的であるならばイノベーションと呼ぶことができるだろう。新たな環境と受け継がれる伝統の組み合わせは、新しい価値だと言える。

人生、生活、仕事において、基本的なものから始まって、選択した行動に対する頼れる基準や強固な基盤を持つこと、それらを維持すること、実践することは重要である。さらには、そのような全体的な活動を続けるために、根底にある構造や基準を変化・変質させていくことが必要になることもあるようである。

【V.スピリット No.29より】

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