ビジネスや日常生活において相手の立場を考えて行動することがよくある。そのようなゲーム的な状況について引き続き考えてみたい。
自分の行動を相手の行動に対して最適化するための思考、相手の戦略を考慮して自分にとって最も適切な戦略を選択するための思考がゲーム理論の基本であることを前回紹介した。ここでは前回の例題に対する解答を紹介する。
簡単に要点だけを解説したい。
ゲーム理論では、「支配戦略 (Dominant Strategy)」、「最適反応戦略(ナッシュ均衡: Nash Equilibrium))」などの専門用語が登場する。
●図表 (前号No.27の図表を再掲載)
【Y社】 維持 引き下げ
【X社】
維持 (4000、4000) (400、5000)
引き下げ (5000、 400) (2500、2500)
例題では、X社にとっても、Y社にとっても「引き下げ」が支配戦略になっている。「支配戦略」とは、相手がどの様な戦略をとっても自分の特定の戦略の利得が自分が選択できる他の戦略の利得を上回るものである。
Y社の「維持」に対してX社の戦略を比較すると「維持」は4000、「引き下げ」は5000となり「引き下げ」の利得の方が大きい。また、Y社の「引き下げ」に対してX社の「維持」は400で、「引き下げ」は2000となるため、この場合も「引き下げ」の方が有利である。
このように他社の戦略に関わらず自社の特定の戦略が常に有利になるものが「支配戦略」となる。同様にY社について考えるとY社にとっても「引き下げ」が「支配戦略」となる。
さらに、他社の戦略に対して最適な戦略になっている戦略の組合せを「ナッシュ均衡」と呼ぶ。余談だが、ナッシュとは、ゲーム理論における均衡概念を考え出した数学者で1994年にノーベル賞を受賞している。さらに余談だが2002年のアカデミー賞映画「ビューティフル・マインド」の主人公になっている人物でもある。
例題における「ナッシュ均衡」は、(引き下げ、引き下げ)である。ナッシュ均衡では、両者の戦略が相手の戦略に対する最適な戦略の組み合わせになっているため、戦略を変更することでプレイヤーの利得を高めることはできない。例えば、X社の「引き下げ」とY社の「維持」の戦略の組み合わせは「ナッシュ均衡」ではない。X社が「引き下げ」戦略を維持したままでも、Y社が「維持」から「引き下げ」に戦略を変更することによって、Y社は利得を400億円から2000億円に高めることが出来るからである。
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