ビジネス用語として「コア・コンピタンス」という言葉が使われることがある。ゲイリー・ハメルとC・K・プラハラードが提唱した経営における概念である。企業内部にある競合他社に真似の出来ない強み、あるいは、競合他社に対する競争優位の源泉となるものがコア・コンピタンスである。
「コア・コンピタンス」という言葉や、それと一緒に扱われることの多い「選択と集中」という言葉は注意して使う必要があるだろう。これらの言葉が意味するものは、一瞬の輝きや短期的な成果を強いる可能性がある。
「コア・コンピタンス」やもう少し視野を広げて、広い意味での「コンピタンス」、つまり、強みや優位性、さらにはそれらをもたらす要素について考えてみたい。
良く知られている経営理論にボストン・コンサルティング・グループのプロダクト・ポートフォリオ・マネージメント(PPM)という事業ポートフォリオを管理するためのフレームワークがある。個々の事業ポートフォリオの詳細な説明は省略するが、企業の活動は「花形製品」、「問題児」、「金のなる木」、「負け犬」の4つの戦略的な単位に分けて、管理される。
一部の優良企業を除くと、コア・コンピタンスは、「金のなる木」を指すことが多いようである。金のなる木とは「相対的な市場シェアが高く、投資資金がそれほどかからず、潤沢な現金収入をもたらす事業」である。これとコア・コンピタンスという言葉が表すものは同等のようである。あるいは、金のなる木を生みだした根源的な力がコア・コンピタンスということになるだろう。
いかに「問題児」、つまり、現状の市場シェアは低いが、成長性の高い事業を育てるかが課題となる。コア・コンピタンスとの関連で言えば、成熟したコア・コンピタンスに経営資源を集中することも一つの戦略だろうが、「明日」のコア・コンピタンスを育てる活動も不可欠である。
企業は「コア・コンピタンス」と「明日のコア・コンピタンス」の中間に軸足を置くべきではないだろうか?そこが私の定義する「コンピタンス」である。また、「明日のコア・コンピタンス」は広い意味でこの「コンピタンス」に含めて考えられるだろう。
「コンピタンス」はどのように実現できるのか?
V.スピリット総集編の第2回で戦略策定における重要な要素として「好きなこと」、「出来ること」、「顧客・社会が求めること」について紹介した。これらの接点と「コンピタンス」は重なるはずである。
これら3つの要素はどれか一つ欠けてもいけない。全て等しく重要である。しかし、短期的には「出来ること」と「顧客・社会が求めること」が足元を安定させてくれる。それが結果的に「好きなもの」と重なることになるかも知れない。しかし、中長期的な視点で、「好きなこと」、つまり、技術の進歩、ライフスタイルや社会の変化を考慮して、また、自己の強み適合性に基づいて成長の方向性を見極めることは欠かせない。そんな中長期的な視点による選択と集中が持続的なコンピタンスを生み出すようである。
【V.スピリット No.23より】
V.スピリット総集編2
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