2026.06.23
優秀な人材がいるのに、なぜ日本は豊かにならないのか ――AI時代に露呈する「作業人材国家」の限界
齋藤 秀樹
株式会社アクションラーニングソリューションズ 代表取締役 一般社団法人日本チームビルディング協会 代表理事
日本企業には、優秀な人材がいる。 真面目で、責任感があり、納期を守り、与えられた仕事を丁寧にこなす。上司の意図を読み、周囲と調整し、ミスを避け、組織の中で波風を立てずに働く。 それなのに、なぜ日本は豊かになっている実感が乏しいのか。 世界銀行のデータでは、日本の2024年のGDP成長率は0.1%にとどまり、GDPは4.03兆ドル、一人当たりGDPは32,487ドルである。2023年には、日本の名目GDPはドイツを下回り、世界3位から4位に下がった。
失敗しない人。
空気を読める人。
指示を守れる人。
協調性がある人。
扱いやすい人。
上司の期待に応えられる人。
もちろん、組織で働く以上、これらは必要である。
しかし、それだけを重視してきた結果、企業は自ら「作業適応型人材」を採用し、育成してきたのではないか。
そして入社後には、こう教える。
まずは仕事を覚えろ。
まずはミスをするな。
まずは報連相を徹底しろ。
まずは上司に確認しろ。
まずは余計なことをするな。
その結果、若者は、顧客や社会を見る前に、社内の正解を探すようになる。
目的から判断する前に、上司の顔色を見るようになる。
違和感を言う前に、空気を読むようになる。
そして会社は言う。
「最近の若手は指示待ちだ」と。
しかし本当にそうだろうか。
若者が指示待ちなのではない。
指示待ちになるように育て、指示待ちであることを前提に管理してきた組織があるのではないか。
若者が作業しかできないのではない。
作業で評価し、作業を間違えないことを優秀さだと教えてきた大人たちがいるのではないか。
若者の主体性を止めている「3つの壁」
若者が動かない。
自分から意見を言わない。
主体性が足りない。
何を考えているか分からない。
こうした言葉は、多くの職場で聞かれる。
しかし、若者の問題に見えるものの奥には、職場側がつくっている壁がある。
一つ目は、曖昧性の壁である。
何のためにやるのか。
どこまで任されているのか。
何を基準に判断すればよいのか。
失敗したとき、どこまで許されるのか。
ここが曖昧なまま、「主体的に動け」と言われても、若者は動けない。
二つ目は、関係性の壁である。
違和感を言ってよいのか。
未完成な考えを出してよいのか。
上司と違う意見を言ってもよいのか。
失敗や不安を共有してもよいのか。
ここに不安があれば、若者は黙る。
黙った若者を見て、大人は「主体性がない」と言う。
三つ目は、存在の壁である。
自分はこの仕事で価値を生んでいるのか。
自分の成長は誰の役に立っているのか。
この会社で働く意味はあるのか。
ここが見えなければ、若者は仕事を「自分ごと」にできない。
筆者は、こうした壁を「3つの壁」として整理している。これは、若手を責めるためのものではない。若者が主体性を発揮できない背景を、職場の構造として見るための視点である。
若者に「もっと主体的になれ」と言う前に、問うべきことがある。
主体性を発揮できるだけの目的、関係性、存在実感を、職場は用意しているのか。
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株式会社アクションラーニングソリューションズ 代表取締役 一般社団法人日本チームビルディング協会 代表理事
富士通、SIベンダー等において人事・人材開発部門の担当および人材開発部門責任者、事業会社の経営企画部門、KPMGコンサルティングの人事コンサルタントを経て、人材/組織開発コンサルタント。
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