調達難にいかに立ち向かうか

2026.06.17

経営・マネジメント

調達難にいかに立ち向かうか

野町 直弘
調達購買コンサルタント

最近の調達購買の現場での課題と悩みは言うまでもなく、中東情勢による石油製品の調達難です。いわゆるナフサショックでしょう。 一方で、我々は過去に多くの調達難の危機を乗り越えてきました。 ただ、今回はマクロレベルの事象であり、個別に打つ手は限られています。 それでは何もできないのでしょうか? そんなことはありません。 今だからやっておきたい、対策は絶対にあるのです。

最近の調達購買の現場での課題と悩みは言うまでもなく、中東情勢による石油製品の調達難です。いわゆるナフサショックでしょう。

「中東情勢の影響でナフサが不足している」
「ナフサを原料とする汎用樹脂が入ってこない」
「こういう状況で、調達として何ができるのか」

これらが、調達購買部門のリアルな声として日々大きくなっています。しかし、少し前を振り返ると、コロナ禍以降の半導体不足を起点に、同様の課題はすでに経験してきました。いわゆるサプライヤの供給力不足という課題です。

この時期のサプライヤ供給力不足には、様々な要因が絡み合っており、サプライヤ毎にバイヤー企業に対する期待やニーズは異なり、対応策も異なっていました。

究極的には、解決策はマルチ化、在庫を持つ、サプライヤとの関係性強化の3つでした。多くの現場で、これらの方策を組み合わせながら乗り切ってきたのが現実と思われます。一方で、今回のナフサを巡る問題を見ていると、これまでのこれらの3つの“打ち手”がそのまま通用しない場面が増えています。

なぜかというと、今回の問題がミクロの問題ではなく、マクロレベルの事象だからです。特定サプライヤの能力不足や、一時的な需給逼迫といった次元ではなく、地政学リスクやエネルギー構造といった広域要因が複雑に絡み合っている。そのため、個々の企業レベルでの短期的な最適化だけでは、解決しきれない領域に入っているのです。

では、「もう打つ手はない」のでしょうか?

もう少し長い視点で振り返ってみると、我々は定期的に調達困難、供給不足に悩まされています。いわゆるサプライチェーンの分断は、いつも我々の身近にありました。

具体的にあげてみると、
新潟県中越沖地震(2007年)
東日本大震災(2011年)
タイ大洪水(2011年)
熊本地震(2016年)
コロナ危機(2020年以降)に端を発した半導体を中心とした供給力不足
アフターコロナ期(2022~2024年)の様々な供給不足&物流混乱
ウクライナ紛争による(2022年〜現在)穀物やエネルギー危機
中国との政情不安(2025年〜現在)によるレアアース調達規制
中東戦争によるナフサショック(2024年〜2026年現在)

多すぎるだろ。

そのたびに「想定外」が発生し、「これまでのやり方では通用しない」と言われてきました。しかし結果的には、その都度何らかの方法で、この危機を乗り越えてきたのです。

そうです。皆さん、これらの事案を乗り越えています。

ただ一方で、繰り返し起きているにも関わらず、属人的な対応能力で乗り越えてきていることは多いです。特に、今回のナフサショックについては先ほども申し上げた通り、マクロレベルの事象であり、出光佐三さんのような方が出てこない限り、解決はしそうもないです。

一方で、会社としての構えはとっておく必要はあります。つまり、今回のナフサショックも、「個別調達の工夫」で乗り切るフェーズではなく、「会社としての構え」を作っておくきっかけにする、と捉えるべきかと考えます。

では、企業として何を準備しておくべきでしょうか。

それが、全社的なサプライチェーンリスクマネジメントの仕組みです。ポイントは大きく2つあります。一つは、サプライチェーンを経営アジェンダとして位置付けること。もう一つは、レジリエンス強化を目的とした全社体制を整備することです。

ある高機能材料メーカーは、社長が委員長を務めるサプライチェーンコミッティを立ち上げて、分科会毎に今後起こりうる潜在リスクを洗い出し、施策を洗い出して実行しています。ポイントは分科会メンバーが全社多機能組織のメンバーであるという点です。

また、ある総合化学メーカーでは、サプライチェーンリスクマネジメント活動ということで、事業部長と調達本部長がタッグを組み、「強靭で持続可能なサプライチェーンの構築」を目指す姿として、共有し、具体的には、原料調達のリスクマネジメント、資材調達のリスクマネジメント、災害や事故など、リスク事象が発生した際の対応要領の策定などを進めています。この活動は平時の時も実施しており、月1回の社長への活動方向やフォローアップを行っています。

他にも様々な全社的なサプライチェーンリスクマネジメントの取組みがあげられます。

例えば、従来工場毎の調達手配だったものを、システムも含め、集中手配を行い、本社サイドで在庫の最適化を図ることによる、適正在庫化と情報交渉力の集約。
新規開発段階からの調達関与、いわゆる開発購買を進めることで、調達性の良い部品などの選定を上流段階から進める仕組みづくり。
単なる販売・製造計画からの需要追随の調達ではなく、リスクを鑑みた意思を持った調達計画の作成。
全社だけでなく、サプライヤ在庫や中間在庫を含めた、在庫の見える化と戦略的活用。
代替品手配や代替サプライヤからの調達意思決定の早期化とそのための意思決定の仕組み作り。
などです。

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野町 直弘

調達購買コンサルタント

調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。

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