​細波を追って、津波に飲まれる

2025.02.27

ライフ・ソーシャル

​細波を追って、津波に飲まれる

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/ネットと比較してどうこう言う以前に、テレビだの新聞だのを含め、日々の話に一喜一憂しているメディアなどというもののすべてが、錯覚の元凶だ。ファンダメンタルな大きな潮流は、さざなみのきらめきに目を奪われていると、かえって見えない。/

テレビ、まして新聞はとろい。ネットの一日遅れ、一週遅れの後追い話しかない。と人は言う。が、情報は速ければいいのか。

情報の速さで言えば、1815年のワーテルローの戦いで、ロスチャイルド家が伝書鳩を使って、先んじてナポレオンの勝敗の帰趨を知り、その後の身代の基礎を築いた話がよく挙げられる。だが、それは真相ではない。もとよりナポレオン敗北を想定して投資していたからこそ、ロスチャイルド家は大儲けできた。ナポレオン再来というドラマチックな情報に興奮していた愚かな人々が、自分たちの妄想に酔って、ありもしない逆張りを膨らませていたから、ロスチャイルド家はそんなカモ連中を最後の最後、ギリギリの瞬間まで太らせていただけ。大局を見れば、ナポレオンはすでに1812年にロシアに大敗しており、エルバ島を抜け出して来たとしても、復権する見込みなど皆無だった。

太平洋戦争の大日本帝国でも、近年のウクライナ紛争でも、似たようなもの。大局を見れば、はなからムリ筋。なのに、情報は人々を踊らせる。小国が大国を打ち負かす、これは善と悪の聖戦だ、などというドラマを捏ち上げ、そんな自分の期待に合う情報だけを集めて、仲間内とのエコーチャンバーで妄想の帝国を築く。しかし、その先に待っているのは、失望以上に手痛い挫折感と、救い難い現実なのに。

この意味で、ネットと比較してどうこう言う以前に、テレビだの新聞だのを含め、日々の話に一喜一憂しているメディアなどというもののすべてが、錯覚の元凶だ。ファンダメンタルな大きな潮流は、さざなみのきらめきに目を奪われていると、かえって見えない。知は力だ。だが、その知は、目先の情報ではない。

地震や火山と同様、気候変動だの、人口減少だの、地方衰退だのも、人間ごときがあれこれやって、それでどうにかできるようなものではない。まあ、なにもしないより、なにかやった方が少しはましかもしれないが、しょせん気休めだろう。なのに、政治家たちは、自分がなんとかする、と言い、運動家たちは、みんなで力を合わせれば、と叫ぶ。せいぜい、これ以上、ひどくならないように、せめて被害損害を最小に、というのならわかるが、解決できる、などと言い切るのは、頭がおかしい。なのに、メディアは、人々を煽って、彼らを世界を救う英雄のように持ち上げ、それを認めない者を徹底批判する。しかし、そんな人身攻撃をしたところで、肝心の問題の解決とは、まったく関係が無い。

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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