孤独になりがちな子育てお母さんの見方として、活動を続けられている、日本子育てアドバイザー協会の小谷野さんに、お母さんたちを助けたいという想いをお聞きしました。(聞き手:猪口真)
「人材育成事業」と「相談事業」が協会の2本柱
猪口 今でこそ子育ての相談窓口は多くなりましたが、たかだか20年前は、子どもを産み育てることは誰しも自然に当たり前にやってきて、疑いもしませんでした。家庭に入ったら黙って子育てしなさいという価値観がありましたね。当時も仕事をされているお母さんが多かったのですか。
小谷野 当時1980~1990年頃の母親の就業率は51%、49%が専業主婦でした。仕事をずっと持っていて、いったん辞めた方が家庭に入るとジレンマを感じてしまうようです。仕事では、非常に有能で、自分の存在意義、価値を認められてきた人たちです。その人たちが家庭の中に入ると、子育ての有能さを誰も認めてくれない、褒めてくれない、誰もねぎらってくれない、その成果に対価はない。価値観が全然違うわけです。自分を無にして、子どもに合わせて、旦那様との生活に合わせて、修行僧のように生活するのは、いったん外を見た方には特に苦痛に感じるのだと思います。
現在2023年母親の就業率は77.8%(厚生労働省)になっています。
猪口 話す相手すらいないという状況だったのですね。
小谷野 そうですね。思いを話すだけ、聴いてくれるだけでいいと言われました。存分に話してもらい、じっくり耳を傾けるのがアドバイザーの役割です。
私たちの話の聴き方の基本メソッドは、受容、共感、ねぎらいの3本柱にしました。「受容」は、お母さんが話したことをそのありのままを受け止めます。「共感」は、お母さんの気持ちを理解します。「ねぎらい」は、褒めるのでもなく励ますのでもなく、妊娠期から今までお母さんが子どものためにしてきたことの、努力を認めます。努力してきたことをすっ飛ばして、「そんなことは親だから当たり前でしょ」と言われるかもしれません。もちろんそうです。
でもね、「お母さん、よくやってこられましたね。こんなに我慢しながら一生懸命頑張ってきましたね」という一言で、気持ちが軽くなるのです。その一言で目を潤ませ、肩を震わせ、泣いてしまうお母さんを何人も見てきました。
イオンさんの赤ちゃん休憩室でアドバイザーに会えます。現場視察に行った時、お母さんたちが明るい晴れ晴れとした顔で帰っていくのを見て、「これでいいんだ」とストンと腑に落ちました。私たちのやっていることはとても地味な活動ですが、世の中に必要とされていると実感したのです。
「育児相談」があるイオンさんが新しくオープンした時、新聞のチラシを握りしめて、「アドバイザーさんはどこですか?」と駆け込んできたお母さんがいました。アドバイザーに辿り着いたその方から、「良かった、大人と話せる」と言われて、とても驚きました。その方に「やっと会えた」と言われたときの迫力は今でも忘れられません。相談する相手は夫でもない、実家の親でもない、近所の知り合いでもない、仲の良いママ友でもない人を欲しかったのです。人に話すのは心配です、どこかで話が漏れるかしれないので怖いわけです。
インサイトナウ編集長対談
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