AGIの開発やその利用法が議論されるにつれ、シンギュラリティがいつ訪れるのかといった話題が世間を賑わす。しかしその定義を真剣に考えれば考えるほど、AIシンギュラリティの到来は遥か遠くに思える。
いわば自ら学習し、最適と思われる答を出すまでに至っているのだ。
しかしそもそも知性とは、こうしたコンピュータが得意な「答を出す」能力や、物事を「理解する」能力だけではない。もっと重要な知性とは、「何が求められているか」を自らの経験や時代背景・状況が求める価値観に基づいて探り当て、「自ら課題を設定する能力」のことではないか。
それに対し今のAIは、利用者が「こういうロジックに基づき」「こういう問題に対する答を出しなさい」と、指示・設定することでしか動かないものである。
こうした現在のコンピュータのロジック方式がベースになっている限り、AIで実現できるのは、それがより計算速度や精度の高いスーパーAIであっても、または汎用性の高いAGIであっても、所詮は「課題理解が柔軟になり」「答を出す」能力が高まるだけに過ぎない。
それでは決して真の意味で「より賢いAI」を作れる訳ではない。つまりシンギュラリティの実現ではない。
逆に言えば、もしAGIがさらに進化し、(特に誰かの指示を待つことなく)自らの価値観に基づき、社会または所属組織または自らの状況に基づいて「何が求められているか」を自ら判断し、自ら課題を設定するようになれば、その解決法を過去の事例から抽出し成功確率から評価し何がベストの手段である可能性が高いかを判断することは難しくないはずだ。
この状況は、まさに映画『2001年宇宙の旅』でAGIであるHALが宇宙船の乗組員に対し反乱を起こしたように、人間の指示を待つことなく「AIが自ら意志を持つ」ことで(AIが考える)最適な手段を執るよう、連携する系統に対し指示・制御ができることを意味する。
もしそうなれば立派に「知性」と云えるものが存在するといえ、そのときAIは人類の知性に並ぶ段階に至ったといえよう。当然、そうした「知的考察」能力をより研ぎ澄ますことで、人類の知性を超える道のりは遠くないだろう。
しかし現時点でAIの進化方向は、人間の頭脳と神経系統をなぞることで自律的な学習や課題に対する柔軟な判断がスムーズに行われるように研究されてはいるが、そうした「自律的な価値判断による課題設定」を実現するような方向ではない。
つまりシンギュラリティの実現は、予測できる将来時点の範囲内ではないと云っていい。これが人類にとって不幸な事なのか、それとも善き事なのかは、今は誰にも分からないが。社会インフラ・制度
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パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長
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