マッガフィンとスナーク、ムーミン

2024.08.01

ライフ・ソーシャル

マッガフィンとスナーク、ムーミン

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/キプリング、ヒッチコック、ルイス・キャロル、そしてトーベ・ヤンソン。だれもがそれを狩ろうと奔走するが、だれもそれが何か知らないもの、それがスナークだ。しかし、スナーク狩りに駆り立てられる人々こそ、じつはスナークだったりする。/

とはいえ、そもそもいったい何が「狂気」か、定義が欠けているのだ。スナーク狩りにいく九人+ビーバー(叔父?)は、じつは、この狂気委員会メンバーのパロディで、狩る偏執的な医師や弁護士、篤志家たちと、狩られる狂人たちとどっこいどっこい。何を探しているのかもわからないまま、大真面目に迷走し続ける。キャロルは、自分を幻のドードー鳥に喩えるような自覚のある当事者として、これをからかわずにはいられなかったのだろう。

これに共感したのが、『ムーミン』で知られるトーベ・ヤンソン。アニメはかってに絵柄を変えてしまっているが、あれにはヒロインのノンノンとかフローレンとか呼ばれる「スノークのおじょうさん」が出てくる。トロール族とスノーク族は、もともとは見た目もかなり違う。というのも、ムーミンシリーズより前、戦時の1943年中にすでに、ヤンソンはスノークという、しかめ面の自画像キャラクターを立てており、ヤンソンがキャロルの『スナーク狩り』にイラストをつけているように、スノーク族は、じつはキャロルのスナークをイメージした、通俗社会の外の存在。ムーミンパパがシルクハットをかぶっているのも、キャロルの帽子屋の延長。ヤンソン自身、いろいろメンタルに不安定で、知ってのとおり、戦後にムーミンが売れるとすぐ、彼女の「彼女」と、離れ小島に籠もってしまった。

Ads by Google

この記事が気に入ったらいいね!しよう
INSIGHT NOW!の最新記事をお届けします

純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

フォロー フォローして純丘曜彰 教授博士の新着記事を受け取る

一歩先を行く最新ビジネス記事を受け取る

ログイン

この機能をご利用いただくにはログインが必要です。

ご登録いただいたメールアドレス、パスワードを入力してログインしてください。

パスワードをお忘れの方

フェイスブックのアカウントでもログインできます。

INSIGHT NOW!のご利用規約プライバシーポリシーーが適用されます。
INSIGHT NOW!が無断でタイムラインに投稿することはありません。