米国大統領選でトランプ優位が公言されるようになっている。トランプ復権が日本にとってどういう意味を持つのか、今一度吟味すべき時だ。
たとえそれによって米国をはじめとする世界の民主主義勢力から大いなる批判と経済的制裁を受けようと、自分たちの正義を貫くのが大国・中国の「筋の通し方」なのである。
この点、「ABCD包囲網なにするものぞ」と息巻いていた戦前の大日本帝国と似ているが、なにせ今の中国はいざとなれば西側諸国と断交しても十分にやっていけるだけの国力が備わっている点が大いに違っている。
さて前提を長々と書いたが、武力による台湾併合を実施するしかないと思い定めている習近平政権にとって、実行への阻害要因は明らかに米軍(およびそれと連携して共同作戦を執るであろう日本の自衛隊)による軍事的妨害であり、それを指揮する米国政府だ。
そして習近平政権にとってこの先10~20年を見越したとき、自分たちが最も優位に台湾侵攻・併合を成し遂げるとしたら、その対峙する米国の指導者は誰がベストだろう。
もうお分かりだろう。そう、トランプが米大統領である時が中国・習近平政権にとって悲願を実行するベストのタイミングなのだ。
他の大統領だったら、西側の盟主としての中長期的世界戦略を考えると、やすやすと台湾を中国に引き渡す訳にはいかない。米軍ができることは何でもするだろう。そして日本の自衛隊と共に、島内で抵抗する台湾軍人たちと連動して中国軍を追い払うため全力を尽くすだろう。
しかしトランプなら違う。彼の頭の中に「米国の中長期的世界戦略」などという概念は元々ないし、新たに植え付けられもしないことは、1期目で見せた「アメリカ・ファースト」志向と「各局面で同盟国相手にディール(取引)を行おうとする言動」で明白だ。
仮に中国が電光石火の早業で台湾を取り囲んで、首都・台北をはじめとする島内の主要な部分を制圧してしまえば、トランプは「ソーリー、遅すぎた。もう今さら無理だ。こんな状況でアメリカの青年の命を無駄に散らせる訳にはいかない」と台湾の救助をあっさりと断念する可能性が十分ある。そうなれば日本の自衛隊も動けない。中国政府はそう分析しているだろう。
そしてトランプが政権を担っている4年間で、最もこのシナリオが成立しやすいタイミングは3つある。それは①トランプが大統領に再び就任する直前・直後、②トランプが退任する直前、③高齢のトランプが病気に倒れて満足に職務を執行できない事態になった時、の3つだ。
要は、「大統領-国防長官(国防総省トップ)-併合参謀本部議長-アメリカ5軍の各長」という指揮系統ラインがまだ確立していないか、または混乱し得る時機を狙うだろう。
その他
2014.01.08
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パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長
パスファインダーズ社は少数精鋭の戦略コンサルティング会社です。「新規事業の開発・推進」「既存事業の改革」「業務改革」の3つを主テーマとした戦略コンサルティングを、ハンズオン・スタイルにて提供しております。https://www.pathfinders.co.jp/ 弊社は「フォーカス戦略」と「新規事業開発」の研究会『羅針盤倶楽部』の事務局も務めています。中小企業経営者の方々の参加を歓迎します。https://www.pathfinders.co.jp/rashimban/ 代表・日沖の最新著は『ベテラン幹部を納得させろ!~次世代のエースになるための6ステップ~』。本質に立ち返って効果的・効率的に仕事を進めるための、でも少し肩の力を抜いて読める本です。宜しければアマゾンにて検索ください(下記には他の書籍も紹介しています)。 https://www.pathfinders.co.jp/books/