米国大統領選でトランプ優位が公言されるようになっている。トランプ復権が日本にとってどういう意味を持つのか、今一度吟味すべき時だ。
さる6月の公開討論会での精彩の無さから沸き起こった民主党内からの撤退勧告の声に押され、バイデン大統領が次期大統領選挙からの撤退を宣言するに至った。一方、トランプ前大統領(以下、トランプ)陣営を見ると、7月13日に発生した暗殺未遂事件を経て共和党内の団結ムードはかつてないほど高まっている。
こんな流れが続いた結果、今ではトランプが次期米国大統領に復帰する可能性が大きいと公言されている。
日本の政治評論家や識者からは「もしトラ(もしトランプが大統領に復帰したら)」シナリオについては、「米国の支援が打ち切られる恐れが高まりウクライナが不利な停戦に追い込まれる」「民主国間の国際協調体制が一挙に弱体化する」「日本政府はトランプから一方的に不利な条件を押し付けられかねない」等々の懸念が以前から指摘されている。
しかし本当に深刻な「あるリスク」についてはあまり深く指摘も議論もされていないように見える。それは何か。ずばり、中国による台湾制圧の蓋然性が一挙に高まることだ。これは日本や米国の視点ではなく、中国の視点で「トランプ再選」の意味を考えることではっきりと見えてくる。
中国という独裁国家の施策や行動の大原則は「共産党支配の継続」である。人民が数十~数百万人死のうが苦しもうが関係ない。その次のレベルである「習近平政権にとっての最重点課題」は間違いなく「祖国統一」、つまり台湾の併合である。
なぜなら福建省長や浙江省幹部だった習近平がその後急速に台頭したのは、「彼こそが祖国統一を成し遂げる人物だ」と目されたことが大きな要因であり、彼の言動を追うと根幹には「自分が」という自負と使命感があると考えるのが自然だ。
とりわけ、異例の第3期に入りながらこれといった実績を上げる目途が立っていない習近平政権にとって、次の第4期につなげるためには何が何でも台湾併合を実現するか、少なくともその目途を付けない訳にはいかないという事情を忘れてはならない。
ここで彼我の認識ギャップを確認しておこう。日本や西洋諸国からすると台湾は実質的に独立した民主国であり、住民の意思を踏みにじって強引に併合することは言語道断の行いだ。しかし中国共産党の視点では、台湾は「敗走した敵勢力とその子孫に不法に占領されたままの土地」だ。取り返すのが中国側の正義なのだ。
もちろん、平和裏に祖国統一できるのが理想だ。しかし今年の台湾総選挙で示された台湾住民の意思は中国への明確な拒絶だった。こうなると中国政府としては武力による台湾併合しか有力な選択肢はない。
その他
2014.01.08
2015.12.09
2017.08.30
2019.04.10
2019.05.08
2020.08.19
2021.05.12
2023.04.26
2024.07.24
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長
パスファインダーズ社は少数精鋭の戦略コンサルティング会社です。「新規事業の開発・推進」「既存事業の改革」「業務改革」の3つを主テーマとした戦略コンサルティングを、ハンズオン・スタイルにて提供しております。https://www.pathfinders.co.jp/ 弊社は「フォーカス戦略」と「新規事業開発」の研究会『羅針盤倶楽部』の事務局も務めています。中小企業経営者の方々の参加を歓迎します。https://www.pathfinders.co.jp/rashimban/ 代表・日沖の最新著は『ベテラン幹部を納得させろ!~次世代のエースになるための6ステップ~』。本質に立ち返って効果的・効率的に仕事を進めるための、でも少し肩の力を抜いて読める本です。宜しければアマゾンにて検索ください(下記には他の書籍も紹介しています)。 https://www.pathfinders.co.jp/books/