/米国 Famous School の教育指導ノウハウを1968年に日本の講談社が買って作ったのが、講談社フェーマススクールズ。その最盛期には、日本だけで一万四千人もの受講生を抱えた。絵本をはじめとして、いまや一大イラストブーム。イラストが単体で作品として画廊に並び、高額で取引される。そのプロたちの中には、元インストラクターや、最後までがんばった「卒業生」は、意外に多い。/
半端に例のイラストコンテストに応募してみただけの人々からすれば、面食らっただろう。一言でいって、一種のカルト集団に近い。アートなんか、高いカネを払って学んで喰えるのか。そう疑問に思ったのも当然だっただろう。実際、当時は喰えない連中の集まりだったのだから。だが、インストラクターたちは、これに自分たち自身を賭けていた。カリキュラムも教科書も、これでもかというくらい、磨き抜かれている。そして、そのことを自分自身に納得させるかのように、受講生たちに長文の講評を書いて、彼らを心から励ました。
きちんと修了できた受講生がどれだけいたか、いまとなってはもうわからない。課題もプロ志向の、かなり高度なものだったので、インストラクターの心からの励ましにもかかわらず、大半は挫折し、詐欺だ、カネ返せ、と恨んだ。だが、その後、時代はまた代わり、絵本をはじめとして、いまや世界的に一大イラストブーム。イラストが単体で作品として画廊に並び、高額で取引される。そのプロたちの中には、元インストラクターや、最後までがんばった「卒業生」は、意外に多い。
資格にも何にもならない「学校」。ただ、自分の技術向上、目的発見のために、遠く郵便のみでインストラクターと受講生がたがいに励まし合うような場所。もう終わって無くなった情熱かもしれない。だが、その磨き抜かれたカリキュラム教科書は、デジタル時代になっても、古びていない。
純丘曜彰(すみおかてるあき)大阪芸術大学教授(哲学)/美術博士(東京藝術大学)、元ドイツマインツ大学客員教授(メディア学)、元テレビ朝日報道局ブレーン
解説
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2024.08.01
大阪芸術大学 哲学教授
美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。