今、リクルート事件を翻って見ると、当時とは全く違って見える景色がある。本来なら概ね真っ当な行為に対し、世間の嫉妬、マスコミの煽り、検察の功名心が寄ってたかって一大疑獄事件に仕立て上げた、日本特有の情けない構図が浮かんでくる。
ではこの事件の結末とその影響はどんなものだったろう(当時は時代の渦中で冷静に分析することができなかったが、今なら可能だろう)。
自民党では派閥領袖クラスや有力政治家の多くが一旦は政権もしくは自民党などでの主要ポストを辞任するなどの混乱を見せたが、結果としては藤波孝生・元官房長官(彼は「将来の総理候補」と言われていた)と、公明党の池田克也議員が在宅起訴され、政治家秘書等4人が略式起訴されただけに留まり(中曽根元首相をはじめとする大物政治家は立件されずに捜査は終了)、彼らの大半は有罪判決を受けている。
文部省ルートでは、元事務次官が収賄罪で起訴され有罪判決を受けている。労働省ルートでも、元事務次官と元労働省課長が受託収賄罪で起訴され有罪判決を受けている。とはいえ事件の騒ぎに比べ起訴対象者は少なかったし、官庁としての痛手は意外と小さかったといえる。
しかし経済界はそれなりの打撃を被った。贈賄側のリクルートは江副氏と社長室長および秘書室長、そしてファーストファイナンス副社長が逮捕され、最終的には有罪判決を受けた。収賄側としてNTTは真藤恒会長と元取締役2人が逮捕・起訴された。
この事件の影響でリクルートはいったん業績不振に陥り、ダイエーグループに身売りした。最近になってNHKがアナザーストーリーズという番組の中で『リクルート事件 35年目の真相』として婉曲的表現ながら冤罪の可能性を匂わせていたが、江副氏の奥さんが「本来なら日本初のIT企業として世界に展開することもできたはず」と江副氏の無念を代弁していた。
確かに江副氏の才覚と、後年幾つものベンチャー企業を輩出した優秀なリクルート社員が束になって海外市場を攻めていたら、今頃GAFAMの一角を崩しているかも知れず、日本のIT業界の歴史はまったく違ったものになっていた可能性はかなり高いと小生には思える。
さらに言えば、その活躍は他の日本の若者に大いに影響を与え、様々な日本発のスタートアップ企業を生み出し、彼らのモノの考え方や世界での事業展開は違う次元に到達したかも知れない。そうなれば、もしかすると平成大不況だって循環的なリセッション程度に収まっていたかも知れない。
そう考えると、この冤罪を仕立てたり煽ったりした連中の根性が浅ましいし、当時の世間の嫉妬心が愚かしく思えてくる。経営・事業戦略
2020.07.15
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パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長
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