健康食品やサプリメント、健康器具、化粧品などのさまざまな宣伝が行われているが・・・・。
同世代で集まると、役割や居場所が生まれます。若い人たちとの集まりだと、「ここは私たち若者がやりますから、ゆっくりしていただいて…」と年寄り扱いされますし、高齢者側も「自分がしゃしゃり出なくても、若い人たちに任せて…」と遠慮してしまいますが、高齢者だけで集まったら、そういうわけにはいきません。集まってやる内容の企画や段取り、さまざまな雑用を、皆で手分けして行わねばならず、自然に集団の中での役割や居場所が生まれてきます。役割や居場所は“褒め合い”や“認め合い”となり、承認欲求や効力感を満たしていきます。
最後に、同世代で集まると健康習慣の継続・強化が期待できます。同世代は同じような体力なので、例えばウオーキングをするにしても、互いに加減することなく同じようなペースで歩けますし、負けん気が出てきて「もうちょっと頑張ろう」という気になります。若い人たちとでは、そうはいきません。また、一人でウオーキングを続けようと決意しても、天気が悪かったり、気が進まなかったりすれば「今日はやめておこう」となりがちですが、皆でやっていると、そんな日でも参加する気が湧いてくるでしょう。
もちろん、「1人で気ままに過ごしたいので、集まるなんておっくうだ」という人が、特に、高齢男性に少なくないのは知っています。そして、それが悪いと言っているわけではありませんし、無理にでも集まるべきだとも思いません。確かに、「孤独は体に悪い(健康寿命を縮める)」という研究結果もありますが、だからといって、身体的健康を維持するために無理やり他者と交流するのもいかがなものかと思いますし、「それで衰えが早くなっても構わない」という生き方まで否定するつもりはありません。
伝えたいのは、私がお会いしたたくさんの人たちを思い浮かべると、若々しい高齢者、健康を維持し続けておられる高齢者の共通点は、「同世代の集まりに参加している」「同世代で集まりやすい環境で暮らしている」以外に、思いつかないということです。元気や健康、若々しさを求める高齢者に向けて、健康食品やサプリメント、健康器具、化粧品などのさまざまな宣伝が行われていますが、何よりも効果的なのはただ一つ、「同世代で集まること」であると、私はほとんど確信しているということです。
(川口雅裕)
高齢社会
2022.11.07
2022.12.01
2022.12.14
2023.01.16
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2023.02.07
2023.03.08
2023.04.13
2023.05.24
NPO法人・老いの工学研究所 理事長
高齢期の心身の健康や幸福感に関する研究者。暮らす環境や生活スタイルに焦点を当て、単なる体の健康だけでなく、暮らし全体、人生全体という広い視野から、ポジティブになれるたくさんのエビデンスとともに、高齢者にエールを送る講演を行っています。