サブカルチャーの秋風の寒さ

画像: 比較のための引用

2022.11.02

ライフ・ソーシャル

サブカルチャーの秋風の寒さ

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/サブカルは、爆発的だが、局所的で寿命が短い。もちろん、それを後生大事に生きていく、というのは、その人の勝手だが、そんなものに限られた社会資源をいくら注ぎ込んでも、再ブームなど起きない。それについていまさら語ったところで、いまの若者は、自分たちのことで忙しい。/

この結果、サブカルチャーというのは、きわめて世代限定的にならざるをえない。同じタイトルでも、世代によって知っているシリーズ、その世界観がまったく異なる。まして、一時期に爆発的にヒットして、心酔した若者が多くいたとしても、その後の世代からすれば、見たことも、聞いたこともない、なにがおもしろかったのかさっぱりわからないし、いまさらそんな古くさい、カビたようなシリーズをアーカイブで見直すより、最新のサブカルチャーのほうが、洗練されている、ということになる。

つまり、世代は、そのサブカルチャーとともに捨て去られる。いまさら、『あしたのジョー』のラスト、知ってるか? などと、全学連残党の老人に話しかけられても、辟易する。いや、以前に、大半はまったくなんの話かすら理解できないだろう。そして、それは、『ヤマト』でも、『ガンダム』でも、『エヴァ』でも、同じこと。当時、ある世代がそれにいかに心酔熱狂していようと、そんな昔語りは、いまや時代背景も世代心情も違いすぎて、聞かされる相手は呆けるばかり。

そればかりではない。そのサブカルチャーも、もともとしょせんきわめて局所的な大ブームだった。たとえば、雑誌の『ビックリハウス』などと言っても、渋谷系限定で、全国の大半の人々は知りもしないだろう。『ヤマト』も、日テレ系未開局で放送されなかった熊本県民などは蚊帳の外。同様に、日本でなんぼのものでも、ナードな日本マニアのほかは、世界では誰も知らない。世界的に大ヒットしたゲームキャラなどでさえ、世代が変われば、世界的に忘れ去られる。

若者は、いつの時代も、どこの国でも、世間知らずで、自分たちが最先端にいて、その文化がやがて世界を席巻するにちがいない、と素朴に信じている。だが、そんなものは、次から次に生まれてくる。そして、老人老婆が舟木一夫の『高校三年生』に涙するのについていけないように、おっさんおばさんのサブカル語りも若い世代からすれば、ただ寒いだけ。儲かった、まだ儲かる、若い連中が再発見して大ブームになるぞ、などと言って、法外な資金と労力を集めてリメイクをしかけてみたところで、それは老いた熱狂カルト残党がふたたび世間にマウンティングできると勘違いした夢の野望にすぎない。

つまり、サブカルは、爆発的だが、局所的で寿命が短い。もちろん、それを後生大事に生きていく、というのは、その人の勝手だが、そんなものに限られた社会資源をいくら注ぎ込んでも、再ブームなど起きない。それについていまさら語ったところで、いまの若者は、自分たちのことで忙しい。

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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