/レポートや卒論の一般的な採点ポイントは5つ。1.テーマ、2.リソース、3.レファレンス、4.コミットメント、そして、5.アチーブメント。書式なんて、しょせんは個々の学会、個々の大学、個々の学科のローカルルール。しかし、内容の評価基準は、世界共通。/
昔はひどかった。いまでも、巷に出回っているレポート・卒論術なる本などを見ると、書式の話だらけ。この著者たちは、レポートや卒論を読まずに見た目だけで採点してきたのだろうか。実際、ほんの十数年前まで、ワープロ禁止、卒論は万年筆の手書きで、誤字脱字修正を認めず、指定の製本屋で金箔押しの硬表紙を付けて出せ、なんていうアホな大学もあったとか。
きょうび、レポートなんか、ネット提出が当たり前。膨大な紙のべらべらを副手や事務に集めさせる、なんて、もはやパワハラの業務妨害。卒論も、指導段階ではデータのやりとり。書式を整えるなんて、最後の仕上げの話で、それ以前に内容がクズでは、最初から話にならない。
そう、問題は、内容だ。レポートや卒論の一般的な採点ポイントは5つ。1.テーマ、2.リソース、3.レファレンス、4.コミットメント、そして、5.アチーブメント。書式なんて、しょせんは個々の学会、個々の大学、個々の学科のローカルルール。しかし、内容の評価基準は、世界共通。
1 テーマ:課題と回答が呼応しているか
字数があればいい、というものではない。与えられた課題、自分で立てた問題に、そのレポートで、きちんと答えが出せているか。なぜ、なら、○○だから。どんなこと、だったら、××なこと。書いているうちに、あさってへ話が広がって転がって行ってしまう、というのは、ダメ。それどころか、課題に対する回答として必要最小限なこと以外は、むしろ書いてはいけない。(知識や情報をひけらかすのは、水っぽい。)
2 リソース:素材を公正客観的に扱っているか
回答を導き出すために役立つ引用や資料を網羅する。このとき、回答から逆算して、引用や資料を御都合主義で取捨選択してはいけない。むしろ都合の悪そうなものであっても、所与の事実である以上、フェアに採り上げておくこと。まして素材であるべき参考文献などのコピペを自分の地の文に取り込むなど、論外。
3 レファレンス:先行研究や反対意見に漏れが無いか
教科書的な総論でもなければ、この意見集約こそがレポートのレポート(再発信)たるところ。同じテーマに関して、他の研究者、教員、学友などの多様な考え方を、歪曲なく提示し、それらをリソースで再検証していく。自称専門研究者でも政治的な如何様野郎が少なくないが、学究は、勝った負けたではなく、あくまで真相究明の場。ディベートのように、最初から相手を言い負かす前提だと、自分自身が道を外れる。あくまで、是々非々で。
哲学
2021.11.13
2022.02.16
2022.03.08
2022.04.03
2022.04.14
2022.06.23
2022.09.15
2022.11.02
2022.11.24
大阪芸術大学 哲学教授
美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。