/読書猿氏が著した『問題解決大全』は労作だ。とはいえ、この本、かならずしもまとまっていない。というわけで、その追加的な解説をかんたんに書き留めておこう。: S10 力まかせ探索、S11 フェルミ推定、S12 マインドマップ、S13 ブレインライティング、S14 コンセプトマップ、S15 KJ法/
S13 ブレインライティング
カードを使って、他人のアイディアの下に自分のアイディアを書き足していくブレストのカード版。連想マップが自分の中での思考整理であるのに対して、これは他人のアイディアに対する連想であり、連想のきっかけとなるルートアイディアも、次の人にとって新鮮であり、また、次の人は前の人が思いもしなかった連想をするかもしれない。ブレストは会議型であるために、それぞれの発言のたびに、どうしてもその後の方向性が絞られていってしまうが、カードの書き込みは、いわば密室型なので、純粋に自分自身の内なる連想が呼び起こされ、メンバーの誰からも抜け落ちていたひらめきや問題点があぶり出されてくる。
S14 コンセプトマップ
この本では、ツリー状がマインドマップで、ネットワーク状がコンセプトマップ、などと分けているが、上述のように、いまどきの連想マップは、ネットワーク状に決まっている。連想マップとコンセプトマップの違いは、コンセプトマップがコンセプトとコンセプトの論理関係を整理していくところ。基本となるのは、相反関係(敵対関係、長所短所)と因果関係(包摂関係、条件関係)。S07ロジックツリーとも似ているが、あれは根から枝へ向けて時間軸があるのに対して、コンセプトマップは共時的で、もっと複雑に絡み合っており、プラスフィードバック(促進)やマイナスフィードバック(抑制)などの全体的な構図を見渡した上で、問題の解決案がほんとうに有効かどうかチェックするのに役立つ。
S15 KJ法
ようするに、フランシス・ベーコンの提唱した純粋な経験帰納法。我々は、問題に取り組む前から、既存の知識でのカテゴリー分けを前提としてしまいがちで、その枠組の決めつけ思い込みこそが真相を分断してしまって、問題を見落とし、解決を見失わせる元凶となっている。そこで、生データ(所与)を観察することのみによって、その共通点を見いだしていき、純粋なボトムアップで知の枠組の再構築を試みる。たとえば、「常識」的に考えれば、ヨーロッパの古典と、インドの教典は、まったく別の地域の文化に属していて、当然のように別々に研究されていた。ところが、18世紀末、英国人がインドを植民地にして、両者の言葉や文法があまりに似ていることに驚いた。ここから、むしろかつて両者は一つの文化だった、民族の方が東西に分裂して移動したのだ、と気づいた。
(以下、つづく)
解説
2022.03.02
2022.04.21
2022.05.06
2022.05.08
2022.05.20
2022.05.31
2022.08.06
2022.08.23
2022.08.31
大阪芸術大学 哲学教授
美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。