スクラッチが危ない!:学習用パソコンの盲点

画像: スクラッチのキャラクター:スクラッチキャット

2022.08.23

ライフ・ソーシャル

スクラッチが危ない!:学習用パソコンの盲点

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/スクラッチは匿名アカウントで、本人確認も年齢制限も行われていない。それで、すでに無防備で承認欲求の強い子供たちの個人情報がダダ漏れ。裸やイジメ、犯罪的なイタズラの写真や動画でも、ノーチェックで、かんたんに載せられ、広められてしまう。ヤバいロリ成人がなにかやらかすのは、もはや時間の問題。そうでなくても、学校を越えて、見ず知らずの中学生から低学年までが関わり合えば、まちがいなくいずれ悶着を起こす。/

コロナ禍もあって、昨年から小中学生全員に学習用パソコンが配布された。だが、子供たちの、その実際の使い方を知っているだろうか。個人情報から違法アップロードまで、この夏、もはや無法地帯だ。

問題なのは、スクラッチ(SCRATSCH)。名高いMIT(マサチューセッツ工科大学)が子供の学習用に開発したブロック型のプログラミング言語。2020年度から小学校で「プログラミング」が必修となり、また、「情報」が大学入試必須科目とされることもあって、学習用パソコンにはデフォルトでスクラッチないしスクラッチジュニアがプレインストールされている。

しかし、これは、じつは、かならずしもそのパソコンで独立に動いているのではない。主流のブラウザ版において、パソコン側はプログラムを設定するのみで、これをWebサーバー側に送り、それが送り返してきた結果を画面表示しているにすぎない。つまり、いわゆるWebアプリであり、プログラム部分は、Webサーバー側において、かんたんに多くの人にも公開共有できる。

しかるに、子供たちは、MITや学校がまったく想定していなかったようなスクラッチの使い方を編み出した。スクラッチのプログラムは、その素材に絵や音楽、音声、動画も組み込める。そこで、その主従を逆転し、行ったり来たりのようなどうでもいい無限ループ・プログラム上に素材を載せることで、その素材を不特定多数に公開配布するSNSにしてしまったのだ。

ただでさえ、一昨年来、学校が閉鎖さられ、ようやく再開しても昼まで黙食。この状況で、日本中の小中学生に一斉に学習用パソコンが配布され、そのすべてにスクラッチが入っているとなれば、そこに爆発的に日本中の子供たちが集まるのは当然。それで、いまやその中は、なんでもあり。まともにちまちまとゲームなどを作っている子供もいないではないが、自分の絵や歌を公開するならまだしも、どこかからパクってきたものを自分のプログラムの「素材」として配布し、いいねのコメントを集める競争になる。

スクラッチ側は、著作権については、使い方のお約束として、その理解も浅い子供たちに責任を丸投げ。それどころか、「著作権侵害は、著作権者以外はどうすることもできません」(https://ja.scratch-wiki.info/wiki/Japanese_Scratch-Wiki:著作権ガイド)などと責任を放棄して開き直っていて、日本でも2018年に法改正されたことを知らないらしい。そもそも、著作権侵害物を不特定多数に配信しているのは、スクラッチのサーバーなのだから、私的にスクラッチに送信しただけの子供たちと違って、むしろ、スクラッチこそが著作権侵害者ではないのか。

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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