/学歴インフレのせいで、かつての工員や店員と同じような低賃金で昇進出世の見込みの無い現場仕事しかなく、くわえて在学中の借金の返済のために、中産階級どころか自転車操業のワーキングプアに陥る。これでは、費用対効果、期待値があまりに悪すぎ、リスクが高すぎる。/
まあ、嘆いてみたところで、時代の変化は止めようがない。考えるべきは、これからの日本社会だ。富裕階層の若者たちは、ろくに勉強もせずに卒業し、すぐ取締役に。それが、大量のワーキングプアの大卒、ドロップアウトの派遣やバイトを差配。労働力は充分だが、どうも舵取りはうまくいきそうもない。安定成長期ならともかく、昨今の劇的な国際情勢の変化の波に翻弄されれば、遠からず泥船難破は必至か。
考えてみれば、ごくわずかな主要大学のほかは、いまだかつてまともな研究機関であったことなどないのかもしれない。ほっておいても学生がじゃぶじゃぶやってきたから、教育機関としても、理屈をこねくり回しているだけのなんだかよくわからないこと、もしくは、現場でお払い箱になったような時代錯誤の「実学」を伝授して、お茶を濁してきた。それでも、なんとかなった。
今後も大きいお金持ちのお友だちのためのゴージャスな幼稚園は存続するだろうが、これまでのような量産型の若者のための大衆大学は生き残れないだろう。その一方、あらゆる分野で、泥船に代わる旗艦を興すような、新時代のホワイトカラー、エンジニアの養成が急務だ。ここには、もはや輸入するだけでキャッチアップできるような既存の体系は無い。教員と学生が一体となって、一から組み立てるような創造力が求められる。もちろん、それは、少数精鋭。しかし、彼らこそがきっと同年代の若者たちを率いて、かつて戦後日本が夢見た豊かな社会を再建してくれると期待している。
解説
2019.04.02
2020.11.07
2021.08.04
2022.01.04
2022.01.13
2022.02.01
2022.02.22
2022.03.02
2022.04.21
大阪芸術大学 哲学教授
美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。