やがて順番が回ってくるワクチン接種に消極的な若者が少なくない。アンケートではその理由は様々だが、「絶対接種したくない」という人はむしろ少数で、あいまいなものが多い。その本当の理由と背景をみてみると、「情報難民」が偏った情報によって不安がっている様子が浮かぶ。
なぜ「自分は感染しないと思う」のかを語っている若い人の動画を観たが、その根拠は「今まで感染していないから」というズッコケるようなものだった。単に運がよかっただけなのに、これからもその強運がずっと続くと信じているその無邪気さには「おめでたい」としか言えない。
また、先述のアンケートには表れていないが(設問にないのと、当人が明かさないためと考えられる)、「過去に一度感染しているから(抗体ができているはずだから)」という理由も、若い人の場合はそれなりに考えられる。しかし実は過去に感染した人の意外と多くが感染予防に十分な抗体を獲得できていないことが分かっている。しかしそうした人たちもワクチンを1度接種することで十分な抗体が作られるので、やはりワクチン接種はしておいたほうがよい。
ここまで見てきて分かったように、ワクチン接種に消極的な人たちの理由のほとんどは根拠が薄弱、またはまったく不合理なものだ(もちろん、体質的な問題等で医師から非推奨とされている場合は別だ)。科学的に裏付けされた情報や合理的な見方に基づいたものではなく、単なる思い込みや偏った情報に迷わされているだけなのだ。
先述したリーディングテックの調査結果でも、(情報の裏付けを要求される)マスメディアではなくSNSで主に情報を集めている人のほうがワクチン接種に消極的な傾向が表れている。つまり個人がいい加減な思い込みでアップした間違った情報がどんどん拡散され、若者の不安感を煽っているという状況が浮かんでくる。現代の若者の情報収集法がここでは悪い方向に作用しているのだ。
しかしこのまま手をこまぬいていては、この先に一般接種が若い世代に回ってくる段階においてワクチン接種率が伸び悩むことになり、行動範囲が広く感染を媒介しやすい若者間での流行が続く事態が予想される。そうなると感染の連鎖はずっと続き、日本社会が集団免疫を獲得できないまま経済活動の正常化はどんどん先送りされてしまう。それは若者の雇用機会を狭めてしまうことにもつながる。
ではどうすればいいのか。端的にいえば、2つある。1つは、科学的見地に基づく正しい情報を積極的に若者に提供し、デマや誤解されやすい情報の拡散を抑える活動を進めることだ。ここでの主役としてはユーチューバーなどのインフルエンサー達とNPO/NGOの人たちに期待したい(あくまで政府の役割は正しい情報提供の部分だ。彼らがへたに情報のコントロールをしようとすると碌なことはない)。この点、既にワクチン接種率が伸び悩んでいる米国など世界各地の取り組み例を参考にできそうだ。
もう一つ、もっと効果的なのは、さしたる根拠なしに迷っている若者たちに「接種したい」と思わせるインセンティブを与えることだ。具体的には若者がコロナ禍で我慢を強いられてきた諸活動(観光や飲食など)に関する規制を、2度のワクチン接種を条件に思い切り緩めるのだ(過去に感染した人は1度の接種でよい)。ワクチン接種証明書を提示すれば以前のようにマスクや酒無しなどの制約なしに楽しんでもらえるようにすれば、彼らも自ら正しい情報を探すだろうし、友人間で誘い合ってワクチンを打ってくれるだろう。社会インフラ・制度
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パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長
パスファインダーズ社は少数精鋭の戦略コンサルティング会社です。「新規事業の開発・推進」「既存事業の改革」「業務改革」の3つを主テーマとした戦略コンサルティングを、ハンズオン・スタイルにて提供しております。https://www.pathfinders.co.jp/ 弊社は「フォーカス戦略」と「新規事業開発」の研究会『羅針盤倶楽部』の事務局も務めています。中小企業経営者の方々の参加を歓迎します。https://www.pathfinders.co.jp/rashimban/ 代表・日沖の最新著は『ベテラン幹部を納得させろ!~次世代のエースになるための6ステップ~』。本質に立ち返って効果的・効率的に仕事を進めるための、でも少し肩の力を抜いて読める本です。宜しければアマゾンにて検索ください(下記には他の書籍も紹介しています)。 https://www.pathfinders.co.jp/books/