NHKを辞めてユーチューバ―に。起業は「縛られない自由な生き方」なのか

2020.08.12

組織・人材

NHKを辞めてユーチューバ―に。起業は「縛られない自由な生き方」なのか

増沢 隆太
株式会社RMロンドンパートナーズ  東北大学特任教授/人事コンサルタント

就活学生なら誰もがうらやむ採用難関企業に入社しながら、3年経たずに辞めてしまう学生はいます。不自由で理不尽な会社員を辞め、自ら起業することは広く受け止められる世の中となりました。そうした選択をどうとらえるべきでしょうか。夏休み期間中の方も、人生を考えませんか?

・3年も耐えられない時は起業すればよい?
ブラックな労働環境が原因以外の理由で就職先を早々と辞めてしまう人の意見に「思った仕事と違った」「やりたいことができない」という不満が古くからありました。また「職場に尊敬できる先輩・上司がいない」「(会社や商習慣)ルールを強要されるのが嫌」「本来の仕事ではない、事務や雑用を命じられた」といったものもあります。

そんな社畜生活、サラリーマン生活にさっさと見切りを付け、自ら起業して「やりたいこと」を誰にも縛られずに自由に生きようという選択を進める有名人、芸能人、大富豪、ビジネスの成功者はたくさんいます。

注意しなければならないのは、そうした「何にも縛られない自由な生き方」を勧める人が、全員大成功者であり大金持ちであることです。中には起業などを進めるサロンやメルマガを出す側、つまりは自らの利益獲得のために起業をあおるポジショントークやインサイダーもたくさんいるということです。

政治家に代表される、生まれ育った閨閥(今や親が政治家かテレビタレント以外、政治家になるのは難しい)や環境(当然親が大金持ち)に恵まれた人ではなくとも、超人的努力と才能で成功した人もいます。重要なことは、「辞めよう」と思っている自分が誰かということだと思います。親子4代続いた上級国民でもなく、ばく大な富をもたらすビジネスセンスを持っている訳でもないような普通の人が、「何にも縛られない自由な生き方」実現は可能なのでしょうか。

・「雇われない選択」の実態
私が会社員を辞め、自分の会社を作ったのは40代半ばでした。会社のしがらみや組織のあつれきなど、普通の会社員並みに嫌というほど味わい、自分なりの戦いもし、転職もしてきました。起業において成功は夢見ましたが、大成功する確信は当然なく、事実何度か存亡の危機を迎えました。

何より会社という「器」のありがたみは、すべてを自分でやらなければならない起業によって十二分に理解できました。雑用するために起業した訳ではありません。しかし事務所のゴミは自分が捨てなければ誰も片づけてはくれません。社会保険など専門知識はまるでなく、法人設立だけでなく設立した後もさまざまな手続きを労働局や法務局、税務署相手にしなければなりません。

何より芸能人でも有名人でもない私は、すべて自分で営業しなければ売上が立ちません。「自分から営業しないで大成功」という起業ストーリーをよく見かけますが、営業は新規開拓だけでなく、クロージングから回収、入金されるまで完結しません。スタッフやシステム投資ができるならもっと楽なのでしょうが、「雇われない選択」とは、雑用含め全部を自分でやるという選択です。

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増沢 隆太

株式会社RMロンドンパートナーズ  東北大学特任教授/人事コンサルタント

芸能人から政治家まで、話題の謝罪会見のたびにテレビや新聞で、謝罪の専門家と呼ばれコメントしていますが、実はコミュニケーション専門家であり、人と組織の課題に取組むコンサルタントで大学教授です。 謝罪に限らず、企業や団体組織のあらゆる危機管理や危機対応コミュニケーションについて語っていきます。特に最近はハラスメント研修や講演で、民間企業だけでなく巨大官公庁などまで、幅広く呼ばれています。 大学や企業でコミュニケーション、キャリアに関する講演や個人カウンセリングも行っています。

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