就活学生なら誰もがうらやむ採用難関企業に入社しながら、3年経たずに辞めてしまう学生はいます。不自由で理不尽な会社員を辞め、自ら起業することは広く受け止められる世の中となりました。そうした選択をどうとらえるべきでしょうか。夏休み期間中の方も、人生を考えませんか?
・2年4カ月でNHKを辞める
タレントのたかまつななさんはお笑い芸人としてデビューし、一方でお笑いジャーナリストを名乗り、演芸ではなく社会問題を広く若者に伝える活動も始め、自身が創業した会社を通じて社会問題や教育問題など出張授業を展開しています。さらに2018年にはNHKのディレクター職として採用され、さらにさらに慶応大学大学院に通いつつも東大の大学院にも通うという超マルチぶりだったようです。
そのたかまつさんが今年7月、NHKを退職したことを自身のユーチューブで報告しました。2年4カ月の在籍だったとのこと。
テレビ局といえば、偏差値最高峰の大学群ですらいまだに超々難関となる就職先です。その頂点の一つNHKですから、どれだけの難関か、もはや奇跡的な採用確率といえるでしょう。大学のキャリア相談を長年やっていますが、旧帝大クラスでもとびきりの学生だけが年に1人とか2人採用される程度のとんでもない最難関であることは間違いありません。「もったいない」と思ったテレビ業界志望者は多かったことでしょう。
・一流企業を早々と辞める若者たち
「3年で辞める若者」に対し、特にネット上において「3年勤めてナンボ」説を唱えればたちまち旧人類扱い、社畜呼ばわりされます。基本的に私の意見は倫理観とか社会正義というより功利主義的な実効性、効果・効率の視点に拠っています。「3年もたずに辞めるのは人としてケシカラン」というような主張をしたことも、思ったこともありません。
ではなぜ早期退職に批判的なのか。キャリア開発のセミナーや指導を行う相手は、大学生・院生だけでなく、企業人、それも年齢問わず新入社員から退職を見据えた50代までさまざまな人々と向き合ってきて、それが損だと思うからです。早期退職するのは個人の自由。自分が良ければ何の問題もありません。しかし「キャリア」は、ただの転職でも個人の好みでもありません。人生です。
人生というスパンでキャリアを見てきましたし、その視点でより良い選択ができる力を養うことがキャリア開発の目的だと信じています。短期間での退職はダメなのではなく、「損」なのです。今の会社を見切って転職する際、あなたの経歴を見るのはネットで社畜批判をする人ではなく、恐らくどちらかといえば会社で過ごした時間の方が長め経営者や人事責任者ではないでしょうか。
コンプライアンスを無視したブラック企業や、健康を損ねてまで勤務を継続する必要などないでしょう。それこそ仕事が元で身体を壊すのは大損だと思います。なのでそのような事態にならないよう、基本的な労働関係の知識を持ち、ブラック企業の洗脳に負けない体制を作っておくことが重要です。
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2009.02.10
2015.01.26
株式会社RMロンドンパートナーズ 東北大学特任教授/人事コンサルタント
芸能人から政治家まで、話題の謝罪会見のたびにテレビや新聞で、謝罪の専門家と呼ばれコメントしていますが、実はコミュニケーション専門家であり、人と組織の課題に取組むコンサルタントで大学教授です。 謝罪に限らず、企業や団体組織のあらゆる危機管理や危機対応コミュニケーションについて語っていきます。特に最近はハラスメント研修や講演で、民間企業だけでなく巨大官公庁などまで、幅広く呼ばれています。 大学や企業でコミュニケーション、キャリアに関する講演や個人カウンセリングも行っています。