/気をつけろ、気をつけろ、そこら中にピンクの象がいるぞ。どうしたらいい、どうしたらいい、満艦飾の硬皮連中はうんざりだ。追っ払え、追っ払え、でも、君らの手助けが必要だと思っているんだ。/
ジョン・バリーコーンは、擬人化された酒であり、もともとは英国の古い民謡だ。アル中に苦しんだジャック・ロンドンは、皮肉を込めて、自分の伝記に、この名をつけた。そして、その中に、酒に侵された神経病的妄想として、「青いネズミとピンクの象が見える」という話が出てくる。『ダンボ』は、ここから、酔っぱらいのファンタジーとしてピンクの象をフューチャーしたわけだが、そもそもなぜ赤ちゃん象がまちがってアルコールを飲んだりするシーンが、『ダンボ』に必要だったのか。
その答えは、この4分半のシーンの真ん中にある。でたらめなシーンの羅列の中に、例のピラミッドと汎覧眼(オクルス・オムニア・ウィデット)が、ちゃっかり出てくる。そもそも、ジョン・バリーコーンの民謡は、知る人々の間では、ヒラム伝説と並行関係がある。というより、メイソンリーの根底に、バッカス的なグリーンマン神話があるからだ。
刺激的な映像の一方、ピンクの象たちの歌は、こうだ。「気をつけろ、気をつけろ、そこら中にピンクの象がいるぞ。どうしたらいい、どうしたらいい、満艦飾の硬皮連中はうんざりだ。追っ払え、追っ払え、でも、君らの手助けが必要だと思っているんだ。」
暴れ回り、恐怖の妄想を振りまくピンクの巨象は、ファシストの象徴にほかならない。米国の民主党は、『白雪姫』をはじめとするディズニー映画が、ナチス宣伝省ゲッペルスらに特別に好まれ、人畜無害のものとして枢軸国内にも流れ込むことをよく知っていた。そして、彼らは、このルートを利用して、敵意の向こうにあるレジスタンスとの連係の道を模索していた。
この手のメッセージは、歴史の中のあちこちで見つかる。が、一般の連中には見つからないように隠されてあるから、秘密のメッセージとして機能する。どうしたら米国と連絡が取れるのかも、この映画をよく見ていると、きちんとわかるのだが、それは秘密。なんにしても、謎が謎であることがわからない人には、象が空を飛ぶ、などという、最初から最後まで、くだらない子供向けの荒唐無稽な話。めでたし、めでたし。
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大阪芸術大学 哲学教授
美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。