世界的なパンデミックが襲い、我々の生活を脅かしている。そしてさらに、アメリカでは、50年代から60年代にかけての公民権運動以来の社会運動の嵐が巻き起こっている。そんな中で、生活者が企業に切望するのは、「ブランド・オーセンティシティ(ほんもののブランド)」だ。その要望に応えるために企業は何をすべきか、をまとめてみた。
ごく単純な例をつかって話してきましたが、おわかりいただけたでしょうか。「ブランド・オーセンティシティ」とは、ブランドが「本物である」ということ。つまり、今、生活者が企業に求めているのは、1)企業が自分の「信じること」を明らかにして、それに沿ってぶれのない行動をすること、そして、2)広告や宣伝、スローガン、あるいは社長やCEOからのメッセージなど、外に向けての宣言が、行動に反映されるように誠心誠意を尽くすことなのです。
昨年、日本でも「流行語」のようになっていた「SDGs(持続可能な開発目標)」も、そして今、アメリカで注目を集めている人種差別の問題も、それへの企業の対応は多くの場合、ある種の「危うさ」を秘めています。たとえば、環境問題についても、人種差別についても、トップの経営者が公式声明を出すだけではだめで、その会社内部の経営や運営において実質的に何をするのかが問われるようになっています。一昔前までは、社会が抱える何らかの問題についてどこかのチャリティ団体に寄付をして、あたかも「企業の社会的責任」が果たされたようにふるまう風潮がありましたが、近年、最大の消費者層として浮上してきた「ミレニアル世代」や「Z世代」などの若い世代は、「企業によるより積極的かつ長期的な働きかけ」を求めるようになっています。
企業には世の中を動かす力がある
アメリカの生活者の半数以上(54%)が「世の中をより良い方向に動かしていく力が企業にはある」と信じています。また68%が、企業にその「魂」や「哲学」を表現することを迫っています。企業が「どんな世の中をつくりたいと望んでいるのか」「何を信じ、何を大切にしているのか」、そして自らの信条や価値観を全うするために「どんな行動をとっているのか」、そのすべてが精査される時代になりました。
ですから、パンデミックの時代を企業が「生き延びる」だけでなく、それを超えてさらに「繁栄」するためにすべきことは二つです。第一に、自分たちが「何を目的にしているのか」「何を信じているのか」「どんな価値観を大切にしているのか」を明確に定義することです。ムダなことのように思えるかもしれませんが、この先、自己認識の低い企業やリーダーは生き残っていけません。これらの認識がなければ、企業の究極的な魅力となる長期的なビジョンを打ち出すことはできず、したがって、競合と差別化を図ることもできないからです。
企業文化
2020.02.28
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ダイナ・サーチ、インク 代表
ダイナ・サーチ、インク代表 https://www.dyna-search.com/jp/ 一般社団法人コア・バリュー経営協会理事 https://www.corevalue.or.jp/ 南カリフォルニア大学オペレーション・リサーチ学科修士課程修了。米国企業で経験を積んだのち、1982年に日米間のビジネス・コンサルティング会社、ダイナ・サーチ(Dyna-Search, Inc.)をカリフォルニア州ロサンゼルスに設立。米優良企業の研究を通し、日本企業の革新を支援してきた。アメリカのネット通販会社ザッポスや、規模ではなく偉大さを追求する中小企業群スモール・ジャイアンツなどの研究を踏まえ、生活者主体の時代に対応する経営革新手法として「コア・バリュー経営」を提唱。2009年以来、社員も顧客もハッピーで、生産性の高い会社を目指す志の高い経営者を対象に、コンサルティング・執筆・講演・リーダーシップ教育活動を精力的に行っている。主な著書に、『コア・バリュー・リーダーシップ』(PHPエディターズ・グループ)、『アメリカで「小さいのに偉大だ!」といわれる企業のシンプルで強い戦略』(PHP研究所)、『ザッポスの奇跡 改訂版 ~アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略~』(廣済堂出版)、『未来企業は共に夢を見る ―コア・バリュー経営―』(東京図書出版)などがある。