コロナが経済に多大な影響を与えることは明白だが、社会全体に心理的な傷跡を残し、生活者の価値観に大きな変化をもたらすものでもある。それに伴い、企業が注力すべき「ブランディング」の焦点も変わる。ポスト・コロナに、いったい何が生活者の心をつかむのか。
ポスト・コロナの成長戦略:「安心」「安全」「信頼」を具体化する
コロナ後の世界でも、コロナ以前と変わらず、「サステナビリティ」が大きなテーマとなる。また、「健康/ウェルネス」も同様に重要だ。コロナ後の世界では、「健康=豊かさ」になる。しかし、「身体によい」だけでは不十分だ。「環境によい」こと。それも、「商品そのもの」だけではなく、「商品を顧客の手元に届ける方法」の健全性も問われるようになる。これは、たとえば、プラスチックごみの廃棄による環境破壊を防ぐため、プラスチック容器を用いない売り方・買い方の提案などといったことを指す。
「ウェルネス」は不況にも強いカテゴリーだが、コロナ後にもこれが重要視されるはずだ。「ラグジュアリ=包括的なウェルネス」と認識されるようになるのではないかと、あるコンサルタントは示唆する。今、生活者の頭の中にあるのは、様々な意味での「恐怖」だ。コロナ危機が過ぎ去った後、生活者がブランド(企業)に対し真っ先に求めるのは「安心」「安全」と「信頼」だろう。それをいかにして提供するのか。
たとえば、サービス業なら、家庭やオフィスに出張して行う、より「パーソナルな」サービスの提供になるのか、あるいは「非接触」の仕組みを取り入れるとともに、「清潔さ」を売りにした店舗なのか。それぞれの業種・業態や、ビジネス/サービス・モデルに見合った、「安心」「安全」「信頼」の具体化戦略を考えていく必要がある。
コロナ後の生活者行動は、主に、ウイルス感染に対する恐怖や、ロックダウン期間中に培われた習慣により形成されていくと思うが、「今後の企業の身の振り方」がそれに与える影響も大きい。
それはつまり、企業が。自社の従業員の安全を守るためにどういった行動をとるか(あるいはとらないか)、店舗ビジネスであれば、店舗を開けておくのか閉めるのか、開けておくとしたらその目的は何なのか、そして、企業として何を魅力とするのか、ただの「安売り」が魅力なのか、それとも顧客に対する思いやりや気遣いを伴った振る舞いが魅力なのか・・・。そういったことが問われてくるということである。
アメリカの小売業、とくに食品などの生活必需品を扱うスーパーなどの小売業では、これまで「低価格」志向のお店が主流であり、確固たるパーソナリティや「ブランド」を売りにしているお店は少数派だった。しかし、コロナ後の生活者が求めるのは、ただ「安ければよい」ではなく、品揃えから、店舗環境、サービスの遂行、従業員に対する姿勢に至るまで、「思いやり」あふれる、信頼できる企業から買うということではないか。
ブランド戦略
2015.07.13
2013.02.08
2010.07.30
2015.07.27
2015.07.17
2020.04.24
2020.07.28
ダイナ・サーチ、インク 代表
ダイナ・サーチ、インク代表 https://www.dyna-search.com/jp/ 一般社団法人コア・バリュー経営協会理事 https://www.corevalue.or.jp/ 南カリフォルニア大学オペレーション・リサーチ学科修士課程修了。米国企業で経験を積んだのち、1982年に日米間のビジネス・コンサルティング会社、ダイナ・サーチ(Dyna-Search, Inc.)をカリフォルニア州ロサンゼルスに設立。米優良企業の研究を通し、日本企業の革新を支援してきた。アメリカのネット通販会社ザッポスや、規模ではなく偉大さを追求する中小企業群スモール・ジャイアンツなどの研究を踏まえ、生活者主体の時代に対応する経営革新手法として「コア・バリュー経営」を提唱。2009年以来、社員も顧客もハッピーで、生産性の高い会社を目指す志の高い経営者を対象に、コンサルティング・執筆・講演・リーダーシップ教育活動を精力的に行っている。主な著書に、『コア・バリュー・リーダーシップ』(PHPエディターズ・グループ)、『アメリカで「小さいのに偉大だ!」といわれる企業のシンプルで強い戦略』(PHP研究所)、『ザッポスの奇跡 改訂版 ~アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略~』(廣済堂出版)、『未来企業は共に夢を見る ―コア・バリュー経営―』(東京図書出版)などがある。