コロナが経済に多大な影響を与えることは明白だが、社会全体に心理的な傷跡を残し、生活者の価値観に大きな変化をもたらすものでもある。それに伴い、企業が注力すべき「ブランディング」の焦点も変わる。ポスト・コロナに、いったい何が生活者の心をつかむのか。
「ロックダウン」という長い冬
現在、アメリカの人口の95%、さらに、世界の人口の約3分の1が「ロックダウン」状態にある。今日、全米のほとんどの小売店舗が休業。営業している店舗も、営業時間を短縮し、入店できる顧客の数を制限している状況だ。それを背景に、「ショッピング」はリアルからネットに大きくシフトしている。2020年3月23日から30日までの一週間のデータを見ると、前年に比べネット通販は14%の増加を記録している。
コロナ後の生活者マインドセットを考える時、最も重要なのは、コロナウイルスが人々の心の中に呼び覚ました「不安や恐怖」が、今後長い間、生活者の意識の中に生き続けるだろうということである。そして、それがビジネスに与えるインパクトは大きい。
ポスト・コロナのブランディング
コロナ後にどれだけの生活者が店舗に戻るのか、それは未知数だ。ロックダウン中に自由にショッピングを楽しめなかったフラストレーションが、開放感とともに需要を押し上げるかもしれないし、「消費しないことが美徳」という新しい価値観が生まれるかもしれない。コロナ後の不況がどれだけ深刻化するかも要因のひとつだ。
どちらに転ぶにせよ、変わらないのは「清潔さ」への関心の高まりだ。そして、「非接触」も新たなキーワードとなる。最新の調査によれば、米生活者の87%が「セルフ・チェックアウト(つまり、店員と接触しないチェックアウト)」、または「非接触のチェックアウト(アプリ等により機器に触れずに決済できるチェックアウト)」を望んでいるという。
「今日、来店客は恐怖を感じながら買い物をしている。生活者にいかに『安心』を提供するかが、小売業者にとって最優先の課題になる」と、ある店舗コンサルタントは指摘する。
まずは、「清潔感」をいかにアピールするか。店舗でのハンド・サニタイザーの提供が常識になるだろうし、タッチスクリーンや現金を介さない決済の方法も当たり前になるだろう。過敏な時期は過ぎ去るかもしれないが、究極的に重要なのは、いかに信頼度の高いブランドになりうるかである。
店舗がいらなくなるわけではない。生活必需品の購入についてはネットでの買い物が主流化しても、人は店舗が提供する「エクスペリエンス」を求めるものであるからだ。
だからこそ、ロックダウンのさなかにも、いかに顧客とのつながりを保っておけるか、それがブランドにとっては重要な課題となる。
ブランド戦略
2015.07.13
2013.02.08
2010.07.30
2015.07.27
2015.07.17
2020.04.24
2020.07.28
ダイナ・サーチ、インク 代表
ダイナ・サーチ、インク代表 https://www.dyna-search.com/jp/ 一般社団法人コア・バリュー経営協会理事 https://www.corevalue.or.jp/ 南カリフォルニア大学オペレーション・リサーチ学科修士課程修了。米国企業で経験を積んだのち、1982年に日米間のビジネス・コンサルティング会社、ダイナ・サーチ(Dyna-Search, Inc.)をカリフォルニア州ロサンゼルスに設立。米優良企業の研究を通し、日本企業の革新を支援してきた。アメリカのネット通販会社ザッポスや、規模ではなく偉大さを追求する中小企業群スモール・ジャイアンツなどの研究を踏まえ、生活者主体の時代に対応する経営革新手法として「コア・バリュー経営」を提唱。2009年以来、社員も顧客もハッピーで、生産性の高い会社を目指す志の高い経営者を対象に、コンサルティング・執筆・講演・リーダーシップ教育活動を精力的に行っている。主な著書に、『コア・バリュー・リーダーシップ』(PHPエディターズ・グループ)、『アメリカで「小さいのに偉大だ!」といわれる企業のシンプルで強い戦略』(PHP研究所)、『ザッポスの奇跡 改訂版 ~アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略~』(廣済堂出版)、『未来企業は共に夢を見る ―コア・バリュー経営―』(東京図書出版)などがある。