「消費者物価指数(CPI)で見たインフレ率が年平均で2%を突破するまで『ゼロ金利政策』を続ける」という黒田春彦・日銀総裁。その金融政策への「突っ込み」の第四弾として、『ゼロ金利政策』を今後もまだ続けるべきなのかという観点について考えてみよう。
しかし現在のニッポンでは、異次元緩和により無理矢理に金利上昇を抑制しているため、自・公のバラマキ政策に官庁が乗っかり財政の膨張にブレーキが掛からない状態になっている。
しかし我がニッポンの国家財政は世界有数の債務超過状態にあり、それらの借金は全て将来の世代に付け回しされるのだ。プライマリーバランスの達成すらどんどん先送りする、今の我が政府・与党のこうした無軌道な財政規律の無視というのを可能にしている元凶が実はゼロ金利なのである。
政府絡みのデメリットの第二は、このままでは次の経済ショック時に本来なら取り得る「金利低下」という政策カードが使えないということだ。既にゼロ金利(いや今はマイナス金利ですらある)状態なので、ドラスチックな市中金利低下を促すことは無理なのだ。
米国のFRB(連邦準備銀行)がトランプ大統領の反対表明を無視して(つまり政治的リスクを取りながらも)懸命に金利を上げている理由がここにある。
次にリーマンショックのような大きな経済ショックがいつ生じるのか、本当に発生するのか、それは誰にも分からない。しかし国民経済に責任ある立場として、景気の良い今のうちにある程度まで上げておかないといけないと判断しているのだ。これこそが良識ある国家の危機管理である。
しかし近い将来にそうした大きな経済ショックが発生した場合、日本が取り得る策はヘリコプターマネー(**)と一段の公共投資ぐらいしかなく、その意味するところは財政再建を諦めることであり、その後は反動としての制御不能なほど急激なインフレが日本経済を襲うことはほぼ確実である。
** 空から現金をばらまくように、中央銀行または政府が対価を取らずに大量の貨幣を市中に供給する政策のこと。
ここまで『ゼロ金利政策』が国民生活にもたらすメリット・デメリットを見てきて総合的に考えれば、さすがに「もう『ゼロ金利政策』は止めたほうがいいな」と判断する日銀の政策委員会メンバーが増えてくるのは自然のなりゆきだろう。日銀の政策転換は近いのではないか。
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パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長
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