「消費者物価指数(CPI)で見たインフレ率が年平均で2%を突破するまで『ゼロ金利政策』を続ける」という黒田春彦・日銀総裁。その金融政策への「突っ込み」の第四弾として、『ゼロ金利政策』を今後もまだ続けるべきなのかという観点について考えてみよう。
つまりゼロ金利の恩恵を大きく受ける輸出企業たちを潤しても、国民生活には特段のメリットはないというのが最近の経済ウォッチャーたちの結論である。
その次に、(輸出企業に限らず)借入金のある企業の金利負担を減らし、資金活動を有利にすることで企業活動が活発化し、ひいては景気にとって好ましい循環になるという、本来の低金利政策による企業業績下支え効果はなくなる訳ではないはずだ。しかし『ゼロ金利』である必要はない。
大半の企業にとってゼロ金利がもたらす若干の金利低下分は企業業績にとってそれほど大きなものではないし、ましてやそれが従業員の給与や取引先の利潤に影響をもたらしている訳でもない。
『ゼロ金利』を最も有難いと感じているのは、前回の記事で伝えた通り、借金で首が回らなくなっている倒産間際のゾンビ企業である。彼らを無理矢理にでも倒産させないことが国民生活全般にとってよいことかというと、むしろそうではない。経済学的に言えば、資源配分をゆがめてしまうからだ(もちろん、ゾンビ企業の従業員や役員も転職するのに短期的には苦労するのだが、やり直せるうちに早く移ってしまったほうがよいということだ)。
つまり低金利は企業業績の下支え要素の一部にはなっているが、国民生活にとってゼロ金利であるメリットは、住宅ローンなどを抱えている人以外にはほとんどないといえる。
一方、『ゼロ金利』がもたらす国民生活上の最大のデメリットは何か。前回の記事でも指摘したが、預金者が金利収入を大きく失ってしまうことが一番大きい。預金者は一般消費者でもあり、しかも日本の家計部門は高齢化が進んでいるために、この収入減がもたらす消費減退もまたインパクト大である。
ゼロ金利が輸出企業を中心に業績向上を通じて企業投資を促す効果が小さいことを先に示したが、消費者の支出性向は企業よりずっと大きく、ゼロ金利の消費減退効果は今やメリットよりも各段に大きいと言わざるを得ない。
つまり日銀のゼロ金利政策は端的に言って、家計部門から実質所得を奪い、輸出企業(およびゾンビ企業)に渡していることになるのだが、両社の支出性向の差から経済政策としては景気を冷やし、日本経済の潜在成長力を落とす方向に作用しているのだ。
実はゼロ金利政策がもたらすデメリットは他にも大きいものがある。それは政府を通じて国民生活にもいずれ跳ね返るものだ。
その第一は、財政規律の弛みだ。通常、日本のような議会制民主主義で資本主義の国では、政権が野放図な追加財政支出をしようとすると市中金利が上がってしまい、自然と歯止めが掛かるという構造になっている。
社会インフラ・制度
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パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長
「世界的戦略ファームのノウハウ」×「事業会社での事業開発実務」×「身銭での投資・起業経験」。 足掛け38年にわたりプライム上場企業を中心に300近いプロジェクトを主導。 ✅パスファインダーズ社は大企業・中堅企業向けの事業開発・事業戦略策定にフォーカスした戦略コンサルティング会社。AIとデータサイエンス技術によるDX化を支援する「ADXサービス」を展開中。https://www.pathfinders.co.jp/ ✅中小企業向けの経営戦略研究会『羅針盤倶楽部』の運営事務局も務めています。https://www.facebook.com/rashimbanclub/
