何度となく大災害に狙われる2018年。大阪のような大都市でさえ水没してしまった台風の中で、デリバリーピザの配達バイクが横転する事故もありました。これらへの対応はどうなっているのでしょうか?
1.基本方針は「店まかせ」
今年多発している台風や地震など自然災害は、インフラとなる物流やその物流を支える道路など大きな影響を与え、結果として経済活動にも大きな影響を与えました。特に関西国際空港が水没したシーンは象徴的で、山間でもない大阪市が猛烈な風と高潮で翻弄される映像は衝撃的でした。そんなトラックすらも横転するような強烈な風が吹き荒れる中、デリバリーピザのバイクも横転しているシーンがニュースに映りました。
もはや災害規模の荒天の日に、自分が外出できないからピザを注文する感覚も異常だと思いますが、そもそもそのピザ会社はなぜ注文を受け、配達したのでしょうか。ネットニュースの取材によれば、広域に店舗展開しているピザチェーンの場合、店舗の営業(開店)方針は基本的に店長にあるというところが多いとのことでした。
つまり荒天でも天災でも店長が営業すると決めれば営業できるということです。さすがにこの大災害のさ中にピザを頼んだ客にも批判は出ましたが、何よりそんな日に営業をしているピザチェーンの責任ではないかという声も上がっています。チェーン本部は、自らが営業を強要していないことを言い逃れしたかったのかも知れませんが、「店まかせ」という危機対応は、完全な間違いです。
2.コーポレートブランドを店任せにする
きわめて生産性の低い日本の流通・サービス業界では、わずかなマージンでも献身的に働く労働者の善意が大きく貢献しています。宅配ピザなどはどうみても売上原価からしたら法外に高い売価ではあると思いますが、当然これはデリバリーという付加サービスへの価格が含まれているからで、生産性を決めているのもすべて本部ということになります。
もちろんピザチェーンだけでなく、日本国内の外食産業や小売業はほとんどすべて異常に低い利益率で経営されているおかげで、私たち消費者は世界規模でもきわめて安価なサービスを享受できています。消費者としては大きな便益ですが、やはりこうした異常事態は永続はできないものです。
日本の流通・サービス業界はこうした無理な低マージン経営が常態化してしまったため、給与水準もきわめて低く、厳しい肉体労働に加えて、台風の中でも配達を要求するようなクレーマーに近い客対応ストレスのような劣悪な労働環境となりました。結果として働きたい若者からも敬遠され、人手不足はこの先充足する可能性すら見えません。
危機管理は経営の根本であり、その結果はコーポレートブランドへの信頼感にも直結します。こうした事態を「店まかせ」にしてしまうような経営は、やはりそのレベルの経営であり、そのレベルの人材しか求めていないのだろうと感じます。
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2019.09.12
2019.11.11
株式会社RMロンドンパートナーズ 東北大学特任教授/人事コンサルタント
芸能人から政治家まで、話題の謝罪会見のたびにテレビや新聞で、謝罪の専門家と呼ばれコメントしていますが、実はコミュニケーション専門家であり、人と組織の課題に取組むコンサルタントで大学教授です。 謝罪に限らず、企業や団体組織のあらゆる危機管理や危機対応コミュニケーションについて語っていきます。特に最近はハラスメント研修や講演で、民間企業だけでなく巨大官公庁などまで、幅広く呼ばれています。 大学や企業でコミュニケーション、キャリアに関する講演や個人カウンセリングも行っています。