ロジカルシンキングを越えて:10.「仮説作りたい、論点切りたい病」とその処方箋

画像: ぱくたそ

2018.09.14

経営・マネジメント

ロジカルシンキングを越えて:10.「仮説作りたい、論点切りたい病」とその処方箋

伊藤 達夫
THOUGHT&INSIGHT株式会社 代表取締役

ロジカルシンキングブームが去ってから長いものの、ビジネスプランニングにおけるロジカルシンキングには大いなる誤解や形式に偏った理解がよく見られます。ビジネスプランニングにおけるロジカルシンキングとは何なのか?何でないのか?誤解や偏った理解を含めて概観しつつ本当に使えるやり方を明らかにしていきます。

とんでもないところに行ってしまったり、どこかの段階でとどまってしまったりといった人もたくさんいます。

そもそも、ブレストをして、「こんなことをすればいい」というのが浮かんで来たりするわけですが、これはどこからやってくるのでしょう?ありていに言えば、自分があってほしいと思う施策アイデアなわけじゃないですか。これが、本当に会社の望む世界なのか?は考える余地があります。

「従業員の給与を上げるべきだ!」という主張などは特に自分に都合がいいだけじゃないの?という問いが必要な施策アイデアです。

「従業員の給与をどういう評価基準で上げるの?」という質問をすると、朝早起きの人は、「朝、しっかり遅刻しないで来る人の給与を上げたほうがいいと思います」と主張したり、英語ができる人は、「TOEICの点数などを職能給に加えてはどうでしょうか?」と主張したりします。

それじゃあ、我田引水ではないのか・・・、と思ったりするわけです。

(給与の問題はGHQの当初の設計では労働運動によって上がるはずだったのが、企業別の労働組合の成立や労働運動が盛り上がらないことなどによって大企業以外は停滞していて、企業間の賃金格差等いろいろと問題があります。が、そのあたりの議論にはここでは触れません。)

この我田引水病とも言うべき病に陥っている仮説思考の中学生はたくさんいます。仮説の世界の「中二病」だと思っておいてください。ブレストでは批判してはいけないというのが拡大解釈されているのか、好き放題にみなさん主張して、我田引水なアイデアばかり、ということは多々あります。

企画の目的はあくまで「当社が、当該企業が、収益を上げること」につながっていなくてはなりません。

「企業価値の向上」を目的においてもかまいません。企業価値が上がれば、資金調達がしやすくなり、資金制約からより自由になっていき、事業機会を逃さないことで、収益につなげられますからね。

ここを越えるには、いわゆる「客観的」に物事を見るほうへ移行していく必要があります。もしくは、自分と違う目的、経験を持ち、全く違う世界を見ている「他人」が世界にはたくさんいることがわかるようになる、ということでもいいですね。

人は、自分の「個性」を信じたい面もあるのですが、自分が見えているものがスタンダードであることを信じて疑わない面もあります。でも、これでは中学生です。

ここを越えるにはどうすればいいのか私も教えながら悩んだのですが、一番手っ取り早いのは「価値観」という言葉を定義しなおすことができると、ここを越えられるようになると思います。

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伊藤 達夫

THOUGHT&INSIGHT株式会社 代表取締役

THOUGHT&INSIGHT株式会社、代表取締役。認定エグゼクティブコーチ。東京大学文学部卒。コンサルティング会社、専門商社、大学教員などを経て現職。

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