ロジカルシンキングを越えて:10.「仮説作りたい、論点切りたい病」とその処方箋

画像: ぱくたそ

2018.09.14

経営・マネジメント

ロジカルシンキングを越えて:10.「仮説作りたい、論点切りたい病」とその処方箋

伊藤 達夫
THOUGHT&INSIGHT株式会社 代表取締役

ロジカルシンキングブームが去ってから長いものの、ビジネスプランニングにおけるロジカルシンキングには大いなる誤解や形式に偏った理解がよく見られます。ビジネスプランニングにおけるロジカルシンキングとは何なのか?何でないのか?誤解や偏った理解を含めて概観しつつ本当に使えるやり方を明らかにしていきます。

「これをすると当社は未来に儲かる」と言えるのならば、「これ」は当社がするとよいかもしれないですよね?当然、企業の資源は有限ですから、儲かると言えるアクションが100個あったとして、すべてやれるわけではないですけど・・・。

だから、「CSRをすると儲かる」とか、「CSRをすると企業価値が上がる」といった仮説がこれまでの世界で正しいと言えるか、を検証すればいいのです。

こういう認識ができると、仮説思考の高校生にはなれるでしょう。

ただね、「仮説をもっと深めていく作業ができるかできないか」でまた差がついてしまう。ここが高校生と大学生の違いです。

もしも、CSRと業績の関係について調べたとして、初めは現在のCSR投資の金額と企業価値が変数になったテーブルを作って、ひたすら相関をみることになるわけですが、これで言える可能性があることは、CSR投資の金額と企業価値には、高い正の相関がある、相関が低い、高い負の相関がある、のいずれかです。

仮に高い正の相関があったとしましょう。

正の相関があったとして、「CSRをすると企業価値が上がる」が言えるかというとそうでもないですよね。

この場合、CSRをがんばってしたから企業価値が上がったのか、企業価値が高い豊かな会社がCSRを実施したのか、の2つの可能性がある。

ただ、この可能性を始めから想定できないと、データを集める作業が非効率になります。

なぜなら、この2つの可能性が初めからわかっていれば、企業の規模別での検証が必須になるだろうから、変数として、企業規模などを表す指標などを始めから調べておくことができるからです。

仮説を立てて、「結果が出るか出ないか」によって、仮説を進化させていく作業をしなくてはいけません。進化というのは仮説が徐々に深層に向かっていくイメージでしょうか。

この仮説を深層に向かって進化させるストーリーを組みながら検証できるには、やはり経験が要ります。アクションの仮説から、それが成り立つマーケットの仮説を考え、それを検証するという作業を5回~10回は経験しないと、「仮説がどう進化していくのか?」「仮説の進化のパターンは?」といったことの想定はなかなかできない。

こういったことを経て、仮説思考の大学生とも言うべき人が誕生します。ここまで来れば、相当高いレベルです。胸を張っていい。

でもね、この段階をすんなり進んで素直に大学生まで成長していってくれるか?というとそうでもないのです。

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伊藤 達夫

THOUGHT&INSIGHT株式会社 代表取締役

THOUGHT&INSIGHT株式会社、代表取締役。認定エグゼクティブコーチ。東京大学文学部卒。コンサルティング会社、専門商社、大学教員などを経て現職。

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