/一度、うまくいかないことは、おそらくまず、同じことをまたやっても、また同じように、うまくはいくまい。押しの一手で、どうにか、などということは、まず通用しない。そんなやつは、よけい嫌われ、かえって絶対にうまくいかなくなる。/
ところが、本人は、機械が壊れている、相手が間違っている、と強固に信じ、自分を被害者のように思い込んで、それを広言するから、いよいよ周囲を呆れさせる。機械が壊れている、相手が間違っているせいで、自分はこんなひどい目に遭っている! みんな聞いてくれ! だが、機械が壊れている、相手が間違っていると思うなら、もうそこですぐに止めればいいのに、それでも連打し続けることで、どんどん問題を大きくして、自分を袋小路に追いやる。そればかりか、周囲からも、ああ、あの変なやつ、あの使えないやつ、また騒いでるよ、とレッテルを貼られ、いよいよその状況から脱出できなくなる。
うまくいかないから、またやってみる、連打する、という発想は、いったいどこから出てくるのだろう。古い機械仕掛けなどだと、それでサビかなにかが取れて、うまくいく、ということでも、子供のころにあったのだろうか。だが、電子機器となると、一度、うまくいかないことは、おそらくまず、同じことをまたやっても、また同じように、うまくはいくまい。人間関係でも同じで、押しの一手で、どうにか、などということは、まず通用しない。そんなやつは、よけい嫌われ、かえって絶対にうまくいかなくなる。
だが、こういう連打バカは世に少なくないらしい。最近のサーバーは、たいてい、そういうバカの連打送信を、スパムとしてブロックするようになっている。そして、いったん連打でスパムとして記録されたら、その後でいくらやり直しても、もうダメ。人間関係でも、こういう連打バカは、確実に出禁だろう。それでさらにクレームで絡めば、つきまとい、ストーカーとして、いよいよ接見禁止。
うまくいかなかったら、その場ですぐに、自分のやり方の方を疑う、というのが、第一。それに問題が無いのを改めて十分に確かめた上で、できれば人に相談して、別の目で見てもらった上で、慎重またやってみて、それでやはりうまくいかないなら、機械や先方のバグを疑う、というのが、第二。そして、これ以上は、もう同じことを繰り返し試しても、かえってトラブルを拡大するだけ。だから、ここでいったん諦めるのが無難。それでも、どうしても、と言うのであれば、第三は、ほかの人に、ほかの機械、ほかの窓口から、後で試してもらう。なんにしても、なにも考えず、ただ同じように力任せに連打しまくるのは、無駄なだけ、本人が行き詰まるだけでなく、周囲や世間としても、たいへんな迷惑。
(by Univ.-Prof.Dr. Teruaki Georges Sumioka. 大阪芸術大学芸術学部哲学教授、東京大学卒、文学修士(東京大学)、美術博士(東京藝術大学)、元テレビ朝日報道局『朝まで生テレビ!』ブレイン。専門は哲学、メディア文化論。最近の活動に 純丘先生の1分哲学vol.1 などがある。)
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大阪芸術大学 哲学教授
美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。