成功と失敗の分かれ目:経験主義による分析

画像: photo AC: はむぱん さん

2018.09.25

ライフ・ソーシャル

成功と失敗の分かれ目:経験主義による分析

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/どうすれば成功し、どうすれば失敗するのか。デカルトは、理性の使い方が違う、と考えた。しかし、ロックによれば、妙な人たちだけで集まって、妙なことばかり聞いたり、言ったり、やったりしていると、理性の常識そのものがズレる。そして、ヒュームに言わせれば、我々は、そのズレた常識を妄信して、自縄自縛に陥る。/

/どうすれば成功し、どうすれば失敗するのか。デカルトは、理性の使い方が違う、と考えた。しかし、ロックによれば、妙な人たちだけで集まって、妙なことばかり聞いたり、言ったり、やったりしていると、理性の常識そのものがズレる。そして、ヒュームに言わせれば、我々は、そのズレた常識を妄信して、自縄自縛に陥る。/


成功者と失敗者

なぜ現実の人間は、それぞれに違うのか。それが近代哲学にとっての中心問題だった。中世までは、それは大したことではなかった。神が個々の人に使命と試練を授けた、で済んだから。ある人は、生まれながらに王で、政治的課題に取り組む。また、ある人は、生まれながらに貧乏で、生活の困窮と戦わなければならない。しかし、そういうものだ、と思ってしまえば、そのことそのものを疑問にも思わなかった。

ところが、近代になると、だれでも、何にでもなれるようになった。生まれに縛られず、フランシス・ベーコンのように、下吏から大法官にまで立身出世することもできるようになった。だが、こうなると、成功する人と、失敗する人との差が明白になる。どうすれば成功し、どうすれば失敗するのか。

金持ちが計算しても、貧乏人が計算しても、天才が計算しても、凡人が計算しても、1たす1は2。つまり、理性は万人に平等に与えられている。ただ、デカルトは、成功する人と、失敗する人では、理性の使い方が違う、と考えた。つまり、失敗する人は、理性を使っていない、もしくは、使っても、使い方がまちがっている、と言うのだ。

懸命に競馬新聞のデータ分析をしている人、それどころか、数字クジのこれまでの当選番号から次の当選番号を予想しようとしている人。まさに人生と知能の無駄遣いだ。そんなことに、いくら合理的に努力したところで、意味が無い。株式市場のデータ分析でも、一発当てた人の講演会で感心しているのも、似たようなもの。過去がどうあれ、未来は変わる。成功者と同じことをしても、失敗した人は、掃いて捨てるほどいる。

となると、成功した人にしても、デカルトの言うように、ほんとうに、理性を使って合理的に努力したから成功したのか。不合理なことをやっていては成功しない、というのは、確かだが、ここから、合理的なことをやっていれば成功する、などということは、それこそ論理的に証明できない。


常識が怪しい

英国の医師、ロックは、生まれながら万人に平等に与えられた理性、などというデカルトの前提に噛みついた。その前提は、多分に神学がかっている。むしろロックは、人間に、生まれながらの理性など無い、タブララサ(ホワイトボード)だ、とした。ただ、人間は、多くの経験を積むうちに、だれもふつうは平準化する。そして、それらの経験から帰納法で一般法則を掴み取れば、だれもがほぼ同じような常識を持つことになる。その常識を、理性とか、言っているだけ。

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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